シェヘラザードに捧げる物語




 あんまりにもホテルで騒ぎが起きるせいで、アルバイトの子が新しく入ってきてもストレスですぐ辞めてしまう。

 前の子は三ヶ月くらいもったけど、今回はどうなるだろう。


「それで……えーと、妹さんに頼まれて控え室に行ったとこまで話しましたよね?」

「はい。それで笑ってたというのは……」


 川島さんはグラスを置いて、視線をさりげなく逸らした。


「その、控え室に妹さんが先に入ったんです。声をかけながら」

「そしたら……あー、そうだったと」

「ええ」


 私はグラスに残ったビールを飲み干した。ぬるい。


「妹さん、その場ですぐにスマホで写真を撮って、出て行ってしまったんですけど」

「冷静ですね」

「最初からスマホを手に持っていたような気がして……」


 喧騒がどこか遠くに聞こえる。

 私はなにをどう言ったものかわからなくて、手持ち無沙汰に焼き鳥の串をいじった。


「それは、つまり……妹さんがこうなると知っていたと?」