シェヘラザードに捧げる物語




 それから声が遠ざかっていくのを確認して、そっとドアを開けた。


 さっさと報告しよう。


 経験上、放置すれば碌なことにならない。

 とりあえず持ち場に戻ろうとしたら、困惑した顔をしたアルバイトの子が向こうからやってきた。


「柴田さん、披露宴は中止だそうです」


 ……遅かったか。


 私はアルバイトの子と一緒にミーティングルームへと急いだ。


「そこで新婦様が体調を崩したから、食事会に変更したって知らされたんです」

「……すぐバレましたけどね……」


 ミーティングルームの近くに、新婦親族側の控え室があればそうもなる。

 壁越しに響く修羅場劇に、スタッフ一同はしれっと聞こえない振りをしてやり過ごしていた。慣れって怖い。


「アルバイトの子、かわいそうでしたね……」

「ずっと怯えてましたからね……」

「あのまま退職にならなければいいんですけど」