シェヘラザードに捧げる物語




「私も、こちらに番号とアドレスが載っていますので」


 私の名刺には、“結園(ゆうぞの)グランドホテル 宴会部 打ち合わせ担当 柴田 律”と表記されている。しかしそれだけではなく、ベルや天使が描かれた可愛らしくも仕事の内容がすぐにわかるようになっている。


「ありがとうございます」


 大賀くんは目を細めて私の名刺を受け取ってくれた。だけどすぐ心配そうな顔になった。眉間にシワが寄って眉が八の字になっている。

 どうしたんだろうと思ったけど、その疑問はすぐ解決した。


「本当に大丈夫ですか、それ」


 彼の視線は私の頭部に向けられている。ガーゼで止血はしてあるけど、「絶対に今日中に医者に診せてください!」と上司である真岡主任から厳命されていた。


「大丈夫です、意識もはっきりしてますし」

「その……よければ病院まで送りましょうか」


 思ってもいなかった申し出に、言葉を返すのが遅れてしまった。


「……大丈夫です、病院は近いですし」