シェヘラザードに捧げる物語




 私たちは盛り上がる二人を後目にレストランを出ると、お互いに軽く挨拶をして別れた。



 そうだ、報告しないと。



 シャワーを終わらせてスマホを手に取ると、昨日の指示されたメールに記載されていた電話番号をタップする。

 数コールしてから、冷厳な声で「はい、原嶋です」と返されて心臓を押さえた。


「柴田です。報告したいのですが、お時間よろしいですか?」

『ええ、お願いします……それで、どうでした?』

「示談について話してました」


 私がはっきり言うと、重たいため息が聞こえてきた。

 それから沈黙が続き、いたたまれなくなって口を開いた瞬間。


『詳しく話してください』


 冷静さを装った、かすかに震えた声が響いた。


「ええと、その……ホテルや浮気相手は訴えないで、君塚さんには接近禁止と慰謝料を少額もらって示談にしたいと」

『……そうですか』


 どんどん雰囲気が暗くなる。