シェヘラザードに捧げる物語




「柴田……?」


 新しい食器を渡す従業員に、笑顔でお礼を言う横顔は。



 ──間違いない。彼女だ。



「秀樹、ですよね?」

「……ですね」

「今日は仕事のはずなのに」


 不思議そうに上半身を彼らのテービルに向けた彼女に、二人はようやく気づいたらしい。

 ぎょっとした顔をして、ぎこちなく会釈してきた。


「柴田さんも……知り合いだったの?」

「聞いてみますか」


 原嶋さんが「えっ」と固まってしまったがこの際無視だ。

 俺は静かに立ち上がると、ツカツカと二人のテーブルに近寄る。


「あ……大賀」

「大賀さん、どうも」


 気まずそうな照屋とは対照的に、柴田はひょうひょうとした様子で俺に向き直った。


「奇遇だな」

「あ、ああ……そう、だな」


 照屋は下を向いてしまった。冷や汗をハンカチでひたすら拭っている。

 柴田は微笑みを浮かべたまま、俺にとんでもない爆弾を投げつけてきた。


「そっちもデートなの?」