テオドラ姫の誕生祝は夕刻から開かれる。
宴の最終日にふさわしく、町も祭りの最後を楽しもうとする人間でいっぱいだ。
だが王宮の隅で、その男たちは二か国の騎士に囲まれていた。
一つはこの国、ネイディアの正騎士。そしてもう一つはジェイク含むイズィナ国第三王子ロイが率いる騎士だ。
勝負は一瞬だった。
隙を突き男たちがテオドラを攫おうとした時、まばゆい閃光が視界を奪った。気付いたときには剣を向けた正騎士たちに囲まれ、一瞬のうちに体が拘束されていたのだ。
それでもジェイクは緊張を解かず男たちをねめつける。
閃光を放ったのはシャロンだが、彼女は少し離れたところで少年の姿をしている。本当はどこか安全なところに、できればミネルバの元にいてほしかったが、
「今はジェイクの側が一番安全でしょう?」
と優しく微笑まれれば頷くしかない。
正騎士たちに囲まれた男達の黒い髪の一部には白っぽい髪の束が混じり、それが編まれているように見えるが、その髪は装飾品だ。遺髪や大事な人の髪をお守りとして身につける習慣自体は珍しくないものだが、それは遺髪ではない。かつて幼かったカロンたちから抜かれた髪だった。
昨夜シャロンの気付いたことは、曖昧過ぎて彼女自身言葉にできないもどかしいものだった。ただ危険なものが近くにいる。そんな予感めいたものでしかなかったからだ。
そこでシャロンに何が思い浮かぶのか、単語でいいから言葉にするよう促した。ロイがミネルバに命令をし、それを可視化していく。水晶に浮かぶ映像にシャロンの記憶もよりはっきりし、何を予感したのかが段々はっきりと浮き上がっていく。同時にテオドラが息を飲み、二人の王女は小さく頷き合った。
それはかつてのカロンが「黒くて大きくて怖いもの」だと思っていた――
「まさか、王女拉致犯の黒幕が残っていたとはね」
怒りの滲む声で男に剣を向けるのは、かつてテオドラを見つけた元捜索隊隊長だ。
男たちはネイディアの東にある地方モニセアの住民だった。
そこは昔一つの小国だったが、今も自治が認められ独特の文化を受け継いでいる地域の一つだ。
今回の宴もきちんと招待を受けての参加のはずだ。しかも後継ぎである長男マトヴェイは、姫の見合い相手の一人でもあった。
「姫を一人消しただけでは飽き足らず、まだ狙ってたのか」
その言葉に男の一人がニタリと嫌な笑顔を見せ、
「あれは勝手に消えたんだよ。あの王女が消したんだろう? 妹なのに残酷なことだよなぁ」
と歌うように話し、楽しげに肩を揺らした。
宴の最終日にふさわしく、町も祭りの最後を楽しもうとする人間でいっぱいだ。
だが王宮の隅で、その男たちは二か国の騎士に囲まれていた。
一つはこの国、ネイディアの正騎士。そしてもう一つはジェイク含むイズィナ国第三王子ロイが率いる騎士だ。
勝負は一瞬だった。
隙を突き男たちがテオドラを攫おうとした時、まばゆい閃光が視界を奪った。気付いたときには剣を向けた正騎士たちに囲まれ、一瞬のうちに体が拘束されていたのだ。
それでもジェイクは緊張を解かず男たちをねめつける。
閃光を放ったのはシャロンだが、彼女は少し離れたところで少年の姿をしている。本当はどこか安全なところに、できればミネルバの元にいてほしかったが、
「今はジェイクの側が一番安全でしょう?」
と優しく微笑まれれば頷くしかない。
正騎士たちに囲まれた男達の黒い髪の一部には白っぽい髪の束が混じり、それが編まれているように見えるが、その髪は装飾品だ。遺髪や大事な人の髪をお守りとして身につける習慣自体は珍しくないものだが、それは遺髪ではない。かつて幼かったカロンたちから抜かれた髪だった。
昨夜シャロンの気付いたことは、曖昧過ぎて彼女自身言葉にできないもどかしいものだった。ただ危険なものが近くにいる。そんな予感めいたものでしかなかったからだ。
そこでシャロンに何が思い浮かぶのか、単語でいいから言葉にするよう促した。ロイがミネルバに命令をし、それを可視化していく。水晶に浮かぶ映像にシャロンの記憶もよりはっきりし、何を予感したのかが段々はっきりと浮き上がっていく。同時にテオドラが息を飲み、二人の王女は小さく頷き合った。
それはかつてのカロンが「黒くて大きくて怖いもの」だと思っていた――
「まさか、王女拉致犯の黒幕が残っていたとはね」
怒りの滲む声で男に剣を向けるのは、かつてテオドラを見つけた元捜索隊隊長だ。
男たちはネイディアの東にある地方モニセアの住民だった。
そこは昔一つの小国だったが、今も自治が認められ独特の文化を受け継いでいる地域の一つだ。
今回の宴もきちんと招待を受けての参加のはずだ。しかも後継ぎである長男マトヴェイは、姫の見合い相手の一人でもあった。
「姫を一人消しただけでは飽き足らず、まだ狙ってたのか」
その言葉に男の一人がニタリと嫌な笑顔を見せ、
「あれは勝手に消えたんだよ。あの王女が消したんだろう? 妹なのに残酷なことだよなぁ」
と歌うように話し、楽しげに肩を揺らした。



