時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 シャロンの言葉にテオドラも「わかってる……」と、寂しそうに頷く。

 二人でいるとテオドラの魔力が強くなる。ネイディアがかつて魔女の多かった国とはいえ、テオドラほど大きな魔力を持つ者は少ないのだという。せいぜい物を少し動かしたり、身体を少し軽くすることが出来る程度なのだそうだ。それもこれもブランシュの生まれ変わりであると考えれば誰もが納得なのだが、それを公表することは諸刃の剣になるだろう。

「すっかり健康を取り戻せた今のテオドラなら、私がそばにいなくても大丈夫。いえ、むしろ離れたほうがいいのよ」

 そう訴えるシャロンの言葉に、ジェイクも、そしてテオドラもロイも訝しげな表情になった。疲れも出ているのだろうが、隠していた怯えのようなものが見えたからだ。

「シャロン?」

 ロイに聞いてみろと無言で促されたジェイクは、言われるまでもなくシャロンの目をのぞき込む。そっとそらされた目には大きな疲れが見えて、ジェイクは胸が引き裂かれそうなほどの痛みを感じた。

「ねえシャロン、今考えていることを教えてくれないか? ぼくは誕生祝を無事に過ごして、君に改めて求婚したいんだ」

 握った手がぴくっと動き、シャロンの目がジェイクを見直す。

「ぼくはもう、二度と君を失いたくない。君の前から消えることも絶対したくない。約束しただろ? 一緒に生きようよ」
「ジェイク……ジェイク……」

 なにかに怯えたように。あるいはまだ混乱しているかのように。何かを訴えようとしながらも、今は落ち着か無げにジェイクの名を呼ぶ以上の言葉をうまく紡げないシャロンを、そっと抱きしめる。

「落ち着いて。大丈夫だから。何に気づいた?」