時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

「ぼくともそうなりたいって、思ってくれてる?」

 耳元で囁くとバカと言われてしまったが、やっぱりシャロンは世界で一番可愛くて綺麗で最高だと実感した。早く明日が過ぎればいいとソワソワする。
 さっきもロイの前で、シャロンの方がジェイクをより好きなように言ってくれたときにはもう、全てをかなぐり捨ててこのまま彼女を連れ去りたいくらいだった。やっと捕まえたと思っているのはジェイクのほうだ。

 もし十年前の時点で気づいていたらと思うと、本当に長い回り道をしたと思う。
 本当に……本当に馬鹿だった。

 だが実のところジェイクは、シャロンが今も何か不安を抱えていることに気づいていた。テオドラを見つけたことでは消えなかった何かに……。


 ようやくテオドラとロイがエルザと共にリビングにやってくると、ミネルバが眠気覚ましに濃いお茶を出してくれた。ジェイクの胸にもたれながら微睡みかけていたシャロンが、伸びをして目をこする。

 少し苦い茶を飲んでいると、テオドラがジェイクを見て目をキラキラさせている。それを見て、まだジェイクを紹介していないことに気づいたらしいシャロンがもじもじし始めた。

「えーっと、お姉様?」
「なあに、カロン」
「あー、えっと、その……。彼がね、あの、私の愛する方、です」

 その紹介にジェイクの鼓動がまた早まる。どうやら恥ずかしさで恋人とも自分の求婚者とも言えなかったらしいシャロンが、心底可愛くて仕方がない。
 同じように思っているのだろう。テオドラがワクワクした様子でジェイクに名前を聞いた。

「ジェイク・ライクストンです、テオドラ姫」

 その瞬間、二人の間に妙な緊張が走った。
 テオドラはこの男が? と思ったのだろう。さっきの言われようはさんざんたったが全て誤解だ。いや、ジェイクがシャロンの気持ちに気づいていなかったのは事実だが……。

 ジェイクのほうは、彼女こそがシャロンを苦しめた張本人だと気づいたため、どうしても怒りが滲んでしまう。
 シャロンがすんなりどこかの王子と結婚してたら苦しむこともなかったはずだが、それだってとんでもないことだ。

 双方が何を考えているかに思い至ったらしいシャロンが、慌てたようにジェイクの腕にすがりついた。

「ジェイク、テオドラは私の命の恩人で、親友で、大好きなお姉様なのよ?」

 悪い感情を持たないでほしいと上目遣いで訴えられ、ジェイクは思わず片手で顔を覆う。
 くっそ、可愛すぎる。