時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 シャロンの発言にエルザが息を飲み、テオドラはころころと笑いだす。

「いやだわ。私の記憶まで掘り起こしてしまったの?」

「というか、それしかないじゃないですか。この館において私より権限が上で、ジョージ様よりも下のマスターなんて」

「あらあらまあまあ――――って、ちょっと待って。あなたの王子様ってジョージの生まれ変わり?」

「私の王子様じゃないですが、ジョージ様を見つけられたから、ここまで来れたのよ。あなたの目的も達成できたと思うわ。私に結婚させた後、あなたはジョージ様を見つけるためにこの館で飛んでいこうとしてたでしょう」

 じとっと恨めしい目になったシャロンに、テオドラは天使のような微笑みを返す。

 拉致によって一人の姫を失ったネイディアの末の王女は、現在一人。
 その姫が結婚したら、もう一人は自由な旅に出る。
 そうテオドラは計画した。

「あの事故で、テオドラはこの館のことも全部、思い出したのね」

 シャロンが大怪我をしたのが引き金になったのだ。

「そう。だからカロンの治療もひそかに施して、国全体から私に関する記憶をカロンと入れ替えたわ。私は国での存在感が薄かったから難しくはなかった。あとは貴女が結婚するまでこの療養カプセルで待てば、私は年も取らずに、しかも健康になることもできる」

「すっかり元気になられて嬉しいです」

「ありがとう」

 そう言いながらテオドラがソワソワしだしたので、シャロンはロイにこちらに来るようにと呼びかけた。小走りに入ってきたロイの目はまっすぐにテオドラを見つめている。シャロンのことなどまるで視界に入っていないのは一目瞭然だ。

「テオドラ、彼がジョージ様こと、イズィナ国の第三王子ロイ殿下よ」

「え、じゃあ」

「何度も言うけど、私の王子様じゃないから安心して」

 だいたい既に、お互いしか目に見えてないじゃないか。

 ロイが立ちすくむ前で、テオドラがゆっくり立ち上がる。彼女がそっと手を差し伸べるとロイは大股でテオドラの前に行くと跪き、その手を両手で握ると指先に口づけを落とした。

「先祖返りかい、ビアンカ。姿形が昔のままじゃないか。いや、昔よりも更に綺麗だ」

 むさぼるように見つめるロイの姿に、テオドラは頬を染めながらクスッと笑う。

「あなたはずいぶん可愛らしくなったわね? 今いくつなの?」