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賊に攫われた時、テオドラはもうすぐ四歳、カロンはもうすぐ三歳の誕生日という頃だった。
「大人だった感覚」の目を通すと、賊たちの残酷さと荒唐無稽な考えに怖気が走る。
その中でカロンは徐々に感情を失っていくことで自分の身を守っていたが、その様子が賊たちには魔王の覚醒の兆候ではと思われていたらしい。幼いテオドラが懸命に守ってくれたが、すでにカロンの生命の灯が危険な状態だったにもかかわらず、だ。
ある日、テオドラはカロンを抱きしめてある魔法を施した。
「カロン聞いて。今からあなたを紅蓮の館へ送るわ」
大好きな姉の言葉は聞こえるものの、さっぱり意味をなさずにカロンは首をかしげる。
「おねえちゃまも、いっしょ?」
「ううん。カロンだけ」
「じゃあやだ」
必死に姉に縋りつくカロンの背中を撫で、テオドラはカロンの頭に頬を付けた。
「ごめんね。一緒に行きたいけど、今の私ではあなた一人を送るので精一杯なの。館の精霊にはあなたのことが分かるように手配したわ。だから何も心配しなくていい。生きて、カロン。大好きよ」
「おねえちゃま」
テオドラはそのまま、古代の転移装置からカロンだけを送り出した。
転移とテオドラの施した魔法の影響、そしてカロン自身が幼かったことから、カロンだった記憶は消えた。いや、紅蓮の館に拾われたころには覚えていたかもしれないが、当時三歳になったばかりだ。すぐ新しい環境のほうに馴染んでしまった。
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「テオドラは私に力を分け与えたことで疲れ切っていたのでしょう……。発見された時彼女が瀕死だったのは……私のせいよ……」
シャロンの目からボロボロと涙がこぼれる。
「あと少し待っていれば、ゼノン様達に見つけてもらえたのに」
あの頃そんな未来は見えなかったし、たらればなど意味をなさないが。



