バカなことをと言うような表情のロイに、シャロンはあえておっとりと笑いかける。
「本当ですよ。私が邪魔な要因なんです。だって別人だから」
「そんなことはない! 私があなたに惹かれたのは事実だ。あなただって」
「……ええ。もしジェイクがこの国に来ることがなったら、もしかしたら……」
それを否定することはできない。
驚いたように強く握られたジェイクの手を握り返した。
彼が来てくれなかったら。そう考えるだけで体が震えてくる。
ジェイクのことを知らないまま、テオドラのいるべき場所でテオドラが歩むはずだった未来を歩いていたかもしれない。でもそれはまやかしだ。
「では私はジェイクに決闘を申し込もう。友人の長い恋の相手だから――そう思ってあきらめようと努力しているが、私はカロン姫の愛を得たい」
立ち止まり、低く殺気のこもったロイの声にシャロンは首を振った。
イズィナには、女性の愛を賭けて男たちが闘う習慣があるのは知っている。女の気持ちは無視かと言えばそういうわけでもない。ありていに言えば、かの国では生活能力がある強い男のほうを選ぶのが幸せだと考えられているからだ。
本来であれば、第三王子で、将来有望であろう騎士の殿下がやや有利だろう。
だがシャロンにその思想はない。
「私の愛はジェイクのもの、彼だけのものです」
ジリッと足が動くジェイクを制止する。剣も持っていないし半分は冗談なのだろうが、二人が戦う意味などないのだ。
「私が勝てば変わるかもしれないだろう?」
ロイが甘く微笑むが、シャロンはあっさり首を振った。
「いいえ。だってジェイクは負けませんよ? 絶対負けませんから、決闘するだけ無駄です。――もしもの時はこの身を使ってでも、負けさせはしないから」
笑顔のまま威圧するシャロンに、ロイはフッと肩の力を抜いた。
「そんなにその男を愛してる?」
クイッと顎でジェイクを示す顔はどこか面白そうにも見える。茶化されたように思え、シャロンはいささかムッとした。



