「マッケラン様」
ゼノンを呼んで立たせる。
彼にも捜索隊にも一分の非はない。
それにシャロンの影響でほころびが出来ていたとはいえ、妻の話を聞いて自力で魔法を解いたのであろうゼノンは、それほどまでにカロンを気にかけてくれたのだろう。もしかしたらシャロンとして遊びに来ていた時も「もしや?」と考えてくれたのではないだろうか。
その気持ちがありがたくてシャロンは首を振った。
「真実は後ほどお話しますが、謝罪は不要です」
「ですがテオドラ様は貴女様が生きていると言っていたのに、我々は信じなかった。幼い姫が現実を受け入れられないだけだと」
「それは当然だと思います」
シャロンはあえてあっさり頷いて笑いかける。意識朦朧の幼女の言葉をそう受け取ったことを責める気は毛頭ない。
「今夜マッケラン様がいるのは運命かもしれません」
そう呟くと、ゼノンは目を見開いて首を垂れる。
「命に代えましてもカロン様のお役に立つことを誓います」
その後ろで追随するエルザに、シャロンは苦笑した。
「姫と呼ばなくてもいいんですってば」
「いえ、カロン姫。どうぞ我々を哀れと思うなら、このまま姫と呼ぶことをお許しください。本当の貴女様でいてほしいという我儘を、どうか、どうか聞いてください」
そこにジェイクがロイと共にやって来た。遅くなったかと言いつつも、シャロンの手を握り涙を流すゼノンにジェイクも戸惑っているようだ。
「マッケラン様は十五年前にテオドラ姫を見つけた英雄なのよ」
それだけでジェイクには理解できたようで「ああ」と頷いたが、ゼノンはそれは違うと言う。シャロンは首を振ってこれ以上の発言を止めた。
シャロンは月明かりに輝くロイの髪を見て、ふっと微笑んだ。心の底から別の温かい感情が溢れるのを感じ、そっと封印する。
ロイは表情には出さないが、なぜここにつれてこられたのか不思議に思っているのだろう。
「では、時間がないので行きましょうか」



