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晩餐は試合の打ち上げと行った様相で盛り上がっていたが、ジェイクとロイは途中で国王のテーブルに招かれ、しばらく盃を交わした。特にどうということもない世間話に終始して拍子抜けするものの、今度はカロン王女のテーブルに招かれる。
そこは少し会場より離れた場所にあり、薄衣が下ろされるとちょっとしたプライベート空間が作られた。外の音が遠くなり、ここに防音効果があることが分かる。中にはカロン姫とエルザ、ロイとジェイクだけになり、ロイが少し居心地悪そうな顔になった。
「姫、どうして私も?」
落ち着かな気なロイにシャロンは優しく微笑み、ジェイクは思わずニヤリと口の端を上げる。
王からもカロンとゆっくり話せと言われたが、それならジェイクと二人きりになるべきではないだろうか。ロイがカロン姫の心を射止めたというのならば、そこにジェイクが控えていても不思議ではないのだが……。
この王子がそう考えているであろうことがわかる。
「ロイ様はここにいるべきだからです」
「と、言いますと……」
ジェイクを気にするように更にソワソワしているロイが気の毒になるが、ジェイクとしてもまだ仮定の状態なので口を噤んだ。
事前にシャロンから短い手紙をもらっていたが、詳細と言うには程遠く、内容も半信半疑だったからだ。それでも無条件でジェイクはシャロンを信じていたので静観を決める。これから少しだけ面白くないことが起こることが分かっているが、今更動揺はすまいと心に決めながら。
「ロイ様は、わたくしを見てどう思われますか?」
特別な音を織り込む声。
小首を傾げるカロン姫にロイは一瞬目を見開き、微笑みらしきものを浮かべた。
「それは、美しいと思いますし、とても、その……心惹かれています」
まるで二人の世界にいるかのようなロイの告白に、シャロンはにっこりと優雅に微笑む。そのカロン姫風のおっとりとした笑みに、ロイが鋭く息を飲んだ。
その様子にジェイクは少しだけ複雑な気持ちになり、視線を天井の方へ上げる。
ジェイク以外気づいていないが、ロイやエルザには今、シャロンの魔法で二重の世界が見えているはずだ。彼女は自分の仮定を確認をしているだけ。
――それでもこの甘い空気にはモヤモヤするだろ?
理解はしている。彼女の厚い信頼も感じている。だから表には出さないが、シャロンの手を握るロイに、ジェイクの存在を完全に忘れたその姿に、後ろから拳骨を食らわす想像くらいは許されるだろう。くそっ。
動揺するつもりがなかったのにしてしまった心を隠していると、シャロンがジェイクを見て一瞬蕩けるような笑みを浮かべる。それはまるで、小さな作戦がうまくいった子どものようでつられて笑ってしまった。
自分の愛が揺らがないと心の底から信じているから、彼女はジェイクの目の前で行動しているのだ。
――ああ、彼女にはかなわないな。
一人じゃない。彼女はジェイクと一緒に戦っているのだと理解した。
そしてシャロンは別れ際に、
「また後ほど」
と微笑む。
ジェイクにはいつものところでと囁いて。



