時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 ジェイクにはよっぽどショックな話だったのか、両手で顔を覆ってがっくりとうなだれてしまう。

「あー、ジェイク? ごめん、ね?」
「――――たの?」

 ん?

「どこにいたの?」
「えーっと、ロゼット様の所の下働き」
「はぁ?」

 顔をあげ、心底驚いたように目を丸くするジェイクに、シャロンはもう一度「ごめん」と言った。

「でも、あそこの下働きは男ばかりで」
「うん、だから十歳くらいの男の子の姿になってました。――あ、心配しなくても十日ちょっとだけだったし、ほかの人にはバレてないし、ね?」
「ね? じゃないだろう。十日ちょっとって、修羅場だったほとんどの期間じゃないか」
「だからごめんてば」

 こんなに落ち込ませるとは夢にも思わず、シャロンはオロオロとしながら本気で頭痛を忘れていたが、ふと何かが降ってくるように閃くものが見える。

「あ‥‥‥」

 頭の中で散らばっていたいくつもの点が光り、今なら糸を通すように次々につながげていけると思った。
 漠然と「しなきゃいけない」と思ってしてきたことの理由が見えた気がした瞬間、ズキンと頭に強い痛みが走り、シャロンは息を飲む。

「シャロン!」

 とっさにジェイクの胸にすがり、そこに自分の額を付けて大きく何度も息をつく。

「ジェイク……私を縛っていた……最後の、鎖の、糸口が見えた」

 歯を食いしばってそう告げると、ジェイクはハッとしたように頷いた。一緒にミネルバに習ったのだ。これを力づくで解こうとすれば、これから強い痛みが襲ってくることを彼も理解したのだろう。これを逃したら、次はいつ捕まえられるか分からないことも。
 決心を込めてジェイクを見つめると、彼は真剣な目で「支える」と頷いた。彼がここにいてくれる、理解してくれる人がいる。それが今は何よりも心強い。

 目の端に駆け寄ろうとするエルザが見える。その向こうにロイを押さえるゼノンが見えた。