「本当よ。会場で一番かっこよかったもの。女の子たちの悲鳴や歓声もすごかったでしょう?」
「でもぼくは、君の応援が一番うれしいよ」
「そう? 試合の後に花輪を投げかけてくれる女の子が現れても、私のほうがいい?」
イタズラっぽく笑うと、ジェイクは一瞬虚を突かれたような顔をした。が、次の瞬間すぅっと青褪め、「お願い、それも忘れて」と囁いたので噴き出してしまう。
前世の馬上試合で優勝したジェイクが、花輪を投げてくれた女の子とイチャイチャしていたことを言ったのだが、彼にとっては十年以上前の話なのだ。それでもすぐになんのことか気づいてくれたのは、同じようなことが何度かあったからだろうか。
「ごめんなさい。思い出してしまったから、ついからかいたくなって」
クスクス笑ってみせるけど、本当は嘘。思い出した瞬間ヤキモチを焼いていた。今のことじゃないのに、あまりにも過去の出来事と状況が似ていると思ったら、つい口をついてしまったのだ。
我ながら可愛くないわと思い、つい視線が下がる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、ジェイクは両手でシャロンの顔を包むと、コツンと額を当てた。
「もう二度としないから」
その声に、シャロンは小さく「うん」と答える。目を閉じると一瞬口づけられ、二人で微笑んだ。小さなモヤモヤがきれいに霧散し、我ながら本当に現金だとシャロンはおかしくなる。
「あのね。今朝、父――国王陛下にあなたのことを話したわ」
手をつないだまま木陰のベンチに腰を下ろすと、ジェイクが一瞬目を見開き、じっとシャロンを見つめた。
「それで?」
「歓迎、ですって」
「ほんとに?」
またからかわれているのではないかと言うような顔をするジェイクに、本当だと頷く。
「あなた、ダリアの称号も得ているのね」
それは騎士の称号の一つだ。複数の中隊長を束ねるくらいの権限がある。場所によっては領主並みの権限も行使できる。そんな称号だった。
だが素直な賛辞を浮かべるシャロンとは対照的に、ジェイクは少し気まずげな顔をした。
「それは、以前国で疫病が発生したときに、ぼくが君のまねをしたから‥‥‥」
自分だけの手柄ではないというジェイクにシャロンは首を振る。功績は大きいが、それだけで得られる称号ではないことはシャロンも知っているのだ。
「でも、病が広がらないように率先して働くあなたは、とても素敵だったわよ」
あの姿を見て、完全に恋に落ちてしまったのだから。
「でも今世では君はいなかった――って、まさか、側にいたのか?」
ギョッとしたような顔をするジェイクに、シャロンは「少しだけね」と笑った。
「えっ? 嘘だろ? 全然気づかなかった。ぼくは君に会いたくて会いたくて死にそうだったのに、声もかけてくれなかったなんて」
「――だって、そんな風に思ってくれてるなんて、あの頃は考えもしなかったんだもの。絶対バレないように、私だって必死だったのよ」
「そんな‥‥‥」
「でもぼくは、君の応援が一番うれしいよ」
「そう? 試合の後に花輪を投げかけてくれる女の子が現れても、私のほうがいい?」
イタズラっぽく笑うと、ジェイクは一瞬虚を突かれたような顔をした。が、次の瞬間すぅっと青褪め、「お願い、それも忘れて」と囁いたので噴き出してしまう。
前世の馬上試合で優勝したジェイクが、花輪を投げてくれた女の子とイチャイチャしていたことを言ったのだが、彼にとっては十年以上前の話なのだ。それでもすぐになんのことか気づいてくれたのは、同じようなことが何度かあったからだろうか。
「ごめんなさい。思い出してしまったから、ついからかいたくなって」
クスクス笑ってみせるけど、本当は嘘。思い出した瞬間ヤキモチを焼いていた。今のことじゃないのに、あまりにも過去の出来事と状況が似ていると思ったら、つい口をついてしまったのだ。
我ながら可愛くないわと思い、つい視線が下がる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、ジェイクは両手でシャロンの顔を包むと、コツンと額を当てた。
「もう二度としないから」
その声に、シャロンは小さく「うん」と答える。目を閉じると一瞬口づけられ、二人で微笑んだ。小さなモヤモヤがきれいに霧散し、我ながら本当に現金だとシャロンはおかしくなる。
「あのね。今朝、父――国王陛下にあなたのことを話したわ」
手をつないだまま木陰のベンチに腰を下ろすと、ジェイクが一瞬目を見開き、じっとシャロンを見つめた。
「それで?」
「歓迎、ですって」
「ほんとに?」
またからかわれているのではないかと言うような顔をするジェイクに、本当だと頷く。
「あなた、ダリアの称号も得ているのね」
それは騎士の称号の一つだ。複数の中隊長を束ねるくらいの権限がある。場所によっては領主並みの権限も行使できる。そんな称号だった。
だが素直な賛辞を浮かべるシャロンとは対照的に、ジェイクは少し気まずげな顔をした。
「それは、以前国で疫病が発生したときに、ぼくが君のまねをしたから‥‥‥」
自分だけの手柄ではないというジェイクにシャロンは首を振る。功績は大きいが、それだけで得られる称号ではないことはシャロンも知っているのだ。
「でも、病が広がらないように率先して働くあなたは、とても素敵だったわよ」
あの姿を見て、完全に恋に落ちてしまったのだから。
「でも今世では君はいなかった――って、まさか、側にいたのか?」
ギョッとしたような顔をするジェイクに、シャロンは「少しだけね」と笑った。
「えっ? 嘘だろ? 全然気づかなかった。ぼくは君に会いたくて会いたくて死にそうだったのに、声もかけてくれなかったなんて」
「――だって、そんな風に思ってくれてるなんて、あの頃は考えもしなかったんだもの。絶対バレないように、私だって必死だったのよ」
「そんな‥‥‥」



