セパーロの会場は、シャロンが知る限りいつも盛り上がっているが、今日の盛り上がりは普段以上だった。
広い試合会場内で二つの陣営に別れ、藤で編んだ軽いボールをけり上げたり手で打ったりして得点を競うのだが、逞しい男性たちの躍動感溢れる動きはそれだけで目を奪われるものがある。
「姫様、ライクストン様の活躍すごいですね!」
会場に目が釘付けのまま、侍女たちが次々と興奮したようにシャロンに耳打ちしてくる。
そう。ジェイクの活躍はすごかった。
ネイディア人なら娯楽としてよく行う競技なので、外国人であるジェイクたちには不利ではないかと不安だったのだが、それは全くの杞憂だった。身軽なジェイクの活躍はその躍動感も目を惹くものがあり、彼が飛び上がって球を相手側の陣地に蹴り込むと、応援席にいる女性たちの黄色い悲鳴がものすごいことになっていた。
今のシャロンは、あれが自分の最愛の男性だという誇らしいような気持ちと、周りを牽制してしまいたいようなやきもきした感じとでなんとも複雑だった。
――もう。なんであんなにかっこいいの。
ジェイクに最優秀選手になってと言ったのは自分だ。彼はそれに精一杯応えようとしてくれている。なのに実際に活躍する姿を見てしまうと、そんなに目立たなくてもいいと思ってしまい、でも同時に彼の活躍を目に焼き付けたくて目が離せなかった。
昨夜は救護室を使ってもらうことは諦めたので王宮に戻ってそれぞれ休んだのだが、しっかり休めているようでホッとした。
帰りはミネルバが道を作っていたとはいえ、シャロンを抱いたままヒョイヒョイと崖を上ってしまうジェイクに驚いたし、いつのまにあんなに逞しくなったのだろうと思う。前世よりも精悍さが増しているのは確実だ。
それもこれもシャロンのためだと、少しくらいは自惚れてもいいのだろうかと考え、熱を帯びた頬を慌てて抑える。
シャロンはといえば、昨夜は眠ってしまったらやっぱり夢だったことにならないか怖くて、つい夜明けまで考え事にふけってしまった。今はまだ、幸せと不安が天秤のように揺れ動く。
四年前、もしも雪が降らなければ何か変わっていたのかな――ふとそんなことを考え、首を振る。
記憶のないあの頃ではシャロンのほうが子どもで、きっとジェイクの気持ちは受け止めきれなかっただろう。昨夜みたいな真剣な男《・》の目をされては、ただ怯えてしまったと思うのだ。
これは少しずつ少しずつ育ててきた気持ちだ。
彼に恋をしたのは、前の時も今回も同じ十六歳の時。どちらも疫病と戦った時だ。前世の時はジェイクを助けに行き、シャロンも前線に立った。今世では誰にも気づかれないよう、魔法で男の子に見せて影で動いた。その中で真剣に働く彼を見て、その姿にどうしようもなく惹かれていった。親友でも家族でもない、違う想い……。
そんな自分の気持ちをごまかしていた時、別の国で打算的な求婚をされた。
いつもそうだ。シャロンを求める人は男女問わずシャロンではなく、紅蓮の館に住む女、もしくは魔女がほしいだけ。どんなに賛辞を述べられようと、それはシャロン自身のことではない。
リュージュの森で過ごしていたときのような、魔女とはいえ一人の女の子として扱ってくれるところが希少なだけ。わかっていたから、いつも如才なくのらりくらりとかわして逃げる。そう、いつものこと。
でもあの日はその求婚者ではなく、突然ジェイクのことで胸の内がいっぱいになった。打算を隠さない求婚者から逃げながら、自分がジェイクに恋をしていたことをはっきりと自覚してしまった。
広い試合会場内で二つの陣営に別れ、藤で編んだ軽いボールをけり上げたり手で打ったりして得点を競うのだが、逞しい男性たちの躍動感溢れる動きはそれだけで目を奪われるものがある。
「姫様、ライクストン様の活躍すごいですね!」
会場に目が釘付けのまま、侍女たちが次々と興奮したようにシャロンに耳打ちしてくる。
そう。ジェイクの活躍はすごかった。
ネイディア人なら娯楽としてよく行う競技なので、外国人であるジェイクたちには不利ではないかと不安だったのだが、それは全くの杞憂だった。身軽なジェイクの活躍はその躍動感も目を惹くものがあり、彼が飛び上がって球を相手側の陣地に蹴り込むと、応援席にいる女性たちの黄色い悲鳴がものすごいことになっていた。
今のシャロンは、あれが自分の最愛の男性だという誇らしいような気持ちと、周りを牽制してしまいたいようなやきもきした感じとでなんとも複雑だった。
――もう。なんであんなにかっこいいの。
ジェイクに最優秀選手になってと言ったのは自分だ。彼はそれに精一杯応えようとしてくれている。なのに実際に活躍する姿を見てしまうと、そんなに目立たなくてもいいと思ってしまい、でも同時に彼の活躍を目に焼き付けたくて目が離せなかった。
昨夜は救護室を使ってもらうことは諦めたので王宮に戻ってそれぞれ休んだのだが、しっかり休めているようでホッとした。
帰りはミネルバが道を作っていたとはいえ、シャロンを抱いたままヒョイヒョイと崖を上ってしまうジェイクに驚いたし、いつのまにあんなに逞しくなったのだろうと思う。前世よりも精悍さが増しているのは確実だ。
それもこれもシャロンのためだと、少しくらいは自惚れてもいいのだろうかと考え、熱を帯びた頬を慌てて抑える。
シャロンはといえば、昨夜は眠ってしまったらやっぱり夢だったことにならないか怖くて、つい夜明けまで考え事にふけってしまった。今はまだ、幸せと不安が天秤のように揺れ動く。
四年前、もしも雪が降らなければ何か変わっていたのかな――ふとそんなことを考え、首を振る。
記憶のないあの頃ではシャロンのほうが子どもで、きっとジェイクの気持ちは受け止めきれなかっただろう。昨夜みたいな真剣な男《・》の目をされては、ただ怯えてしまったと思うのだ。
これは少しずつ少しずつ育ててきた気持ちだ。
彼に恋をしたのは、前の時も今回も同じ十六歳の時。どちらも疫病と戦った時だ。前世の時はジェイクを助けに行き、シャロンも前線に立った。今世では誰にも気づかれないよう、魔法で男の子に見せて影で動いた。その中で真剣に働く彼を見て、その姿にどうしようもなく惹かれていった。親友でも家族でもない、違う想い……。
そんな自分の気持ちをごまかしていた時、別の国で打算的な求婚をされた。
いつもそうだ。シャロンを求める人は男女問わずシャロンではなく、紅蓮の館に住む女、もしくは魔女がほしいだけ。どんなに賛辞を述べられようと、それはシャロン自身のことではない。
リュージュの森で過ごしていたときのような、魔女とはいえ一人の女の子として扱ってくれるところが希少なだけ。わかっていたから、いつも如才なくのらりくらりとかわして逃げる。そう、いつものこと。
でもあの日はその求婚者ではなく、突然ジェイクのことで胸の内がいっぱいになった。打算を隠さない求婚者から逃げながら、自分がジェイクに恋をしていたことをはっきりと自覚してしまった。



