時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 チラリとミネルバを横目で見ると、まるで人間のように片方の眉をあげられたので慌てて背筋を伸ばす。あまり器の小さいところを見せてミネルバから師匠に変化でもされたら、間違いなく放り出されると思った。シャロンが戻った今、準備さえ整えばいつだって彼女はどこにでも飛び立てるのだ。

「あいつとは、小さなころに会ったことがあるのかもね」

 可能性の一つを言うと、彼女はさして気にしてない様子で「そうね」と微笑んだ。

「それでね、考えたんだけど。試合の後の晩餐、それからカロンの誕生会には、二人にそばにいてもらいたいの」

 だから最優秀選手になってと懇願され、ジェイクは「――わかった」と頷いた。実際にはよくわからなかったが、シャロンは何かを色々考えているときの顔をしているので、疑問などを口にして邪魔するのは得策ではない。

「そういえば、明後日は本当に君の誕生日なの?」

 それでも一つだけ気になっていたことを尋ねると、シャロンはハッとしたような顔をして頷いた。

「そうみたい。カロンのお墓に生年月日が彫ってあったのを見たから間違いないと思うわ」

「墓?」

「そう。この国の末の王女カロンは、公には死んでるのよ」

 何でもないふうに肩をすくめられジェイクは愕然とした。しかも「私は二度死んでるのね」と笑われ、自分もだと笑い飛ばすべきか、彼女を抱き寄せるか悩み、結局抱きしめた。

「ジェイク?」

「でも君は生きている」

「ん。ジェイクもね」

 当たり前のように抱擁を返され、ほっと息をついた。
 自分の墓を見るなんて、自分の存在自体を丸否定されるような恐怖だろう。そのとき側にいられなかったことを悔やんだ。

「それでね、実はテオドラも誕生日が同じ日なのよ」

 丸一年違いなのと、腕の中でジェイクを見上げてにっこり微笑むシャロンが可愛くて、少し上の空で頷く。

「もう! ちゃんと聞いてる?」
「聞いてる」

 ――ああ、絶対に、誰にも渡すものか。