時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 突然の名字呼びにまたシャロンが消えてしまったのかと思って焦るが、彼女はいたずらっぽく微笑むので冗談だと分かりホッとする。

「カロンの侍女たちには、異国の騎士ライクストン様は人気なの。ロイ様と人気を二分すると言ってもいいくらいだけど、少なくともエルザ‥‥‥カロンの仲良しの侍女の一押しはあなたなのよ」

 面白そうに話すのを見る限り半分は冗談なのだろうが、とりあえず自分が最優秀選手になれば、シャロンの口づけは自分のものだということは理解した。

「じゃあ、どうしてロイの名前も出るんだ?」

 自分だけを応援してほしいのに、なぜそこに、自分よりも地位も見た目も上の男の名前を出す。昼間も彼女がロイに何かささやかれていたことを思い出し、ジェイクは眉を寄せた。ロイのあんなに切なそうな顔は、気のせいだと思いたかったのだが……。

「ロイ様にも用があるから、かな」

「どんな?」

「んー。もう少しはっきりするまで説明は待って。自分でもうまく話せる気がしないから」

「わかった。じゃあ昼間、ロイになんて言われてたの?」

 せめてそれくらいは教えてほしい。

「――自分のほうが先に出会っていたら、何か変わっていたでしょうかって」

「っ!」

「だから、あなたにふさわしいのは私じゃないってお答えしたんだけど」

「そ、そう」

 ジェイクは一瞬噴き出した汗をぬぐい、でもどうしても気になるので「で、変わってたの?」と、つい尋ねてしまう。

「それなんだけど‥‥‥むしろ私は、貴方よりロイ様のほうを先に知っていたと思うのよね」

 シャロンは何か考え込むように中空を見つめる。そのもどかしそうな表情に不安になるが、それでもシャロンはジェイクに愛しているとはっきり言ったのだ。誕生日を無事過ごせたら求婚を受け入れるとさえ!