大きく深呼吸して、波のように押し寄せる恐怖を振り払う。
「いいよ。なに?」
「明後日、もしまた何かあっても時をかけないで」
明後日……シャロンが二度ジェイクの死を目の当たりにし、ジェイクが一度シャロンをなくした日。
「ジェイクに何かあったら私は後を追う。でももし私に何かあっても、もうそのままにしてほしいの」
「ぼくに一人で生きろと?」
あえぐようなジェイクの問いに、シャロンは頷いた。
もしものとき、自分は生きることを放棄すると言っているのに彼には生きろとは、とても我儘なことを言っているのかもしれない。それでも彼には生きていてほしい。その願いだけは変わらないのだ。
「ジェイクは、私がいなくても幸せになれるわ。絶対に」
「ちが‥‥‥!」
「どちらにしても、それだけの力はもうここには残ってないわ。時をさかのぼることは不自然なことよ。私が言えることではないけれど」
ミネルバが同意するように頷くのを見、シャロンは手のひらをジェイクの頬に当てる。そっと撫でると伸びかけたひげが当たり、それがなんだかとても愛おしくて、彼がここに生きてる証のように思えて、シャロンは微笑んだ。
「明後日、カロンの誕生祝いを無事終えることが出来たら――あなたの求婚を受け入れます」
シャロンの手に自分の手を重ねたジェイクは、低い声で一つ目の約束を了承した。
「わかった。何事もなく無事に過ごせれば問題ないんだからね」
ジェイクを殺そうとした男はもういない。ジェイクの花嫁になるはずだった女性に出会うこともなかった。それを理解していても、そうなるようジェイクが未来を変えたことが分かっても、シャロンの中の恐怖は楔のようにしっかり打ち込まれている。
でも本当に未来が変わっているなら、もう一度迎える明後日を最後にできるなら――。私は、彼と共に幸せを築いてもいいのだろうか……。
「シャロン、もう一つは?」
ジェイクの青い目がきらめき、手のひらに口づけられる。
シャロンは愛しさと苦しさで喉の奥に塊が詰まったようになりながらも、どうにかもう一つの願いを口にした。
「――ずっと、一緒にいて。絶対に私を置いて行かないって、約束して」
こらえていた涙が一筋こぼれおちる。
隠し続けていた本当の願いだった。絶対に叶わないと思っていた夢だった。
「私と結婚するなら、老衰以外で死ぬなんて許さない。私を置いていくなんて、勝手に死んじゃうなんて、絶対許さないんだから。私以外の女の子がジェイクの隣にいるのも嫌。あなたの手も唇も、私以外に触れないで! こんなわがままを嫌だと思うなら、どうかこのまま全部忘れて……」
ぽろぽろと涙が止まらなくなる。
一生に一度の願いを吐き出し、シャロンは両手で顔を覆った。
「もちろんだ」
ジェイクのかすれた声が聞こえ、ゆっくりと抱きしめられる。
「もちろんだ。約束する。こんな嬉しいわがままなら、いくらだって聞く」
髪を撫でられ、シャロンはたまらずしゃくりあげた。
「ねえシャロン、君もだよ? ぼくを置いて行かないでくれ。ぼくだって、君の隣に他の男がいるのは嫌だ。君のかわいい笑顔でさえ独り占めしたくて仕方がないんだ」
カロン姫にみんなが鼻の下を伸ばしてるのに腹が立って仕方がなかったと言われ、シャロンはクスクスと笑った。ぜったいそんなことないのに。
「うん。約束する」
ジェイクの腕の中でシャロンは頷いた。その背に手を回し、力いっぱい抱きしめる。
「愛してる、ジェイク」
「いいよ。なに?」
「明後日、もしまた何かあっても時をかけないで」
明後日……シャロンが二度ジェイクの死を目の当たりにし、ジェイクが一度シャロンをなくした日。
「ジェイクに何かあったら私は後を追う。でももし私に何かあっても、もうそのままにしてほしいの」
「ぼくに一人で生きろと?」
あえぐようなジェイクの問いに、シャロンは頷いた。
もしものとき、自分は生きることを放棄すると言っているのに彼には生きろとは、とても我儘なことを言っているのかもしれない。それでも彼には生きていてほしい。その願いだけは変わらないのだ。
「ジェイクは、私がいなくても幸せになれるわ。絶対に」
「ちが‥‥‥!」
「どちらにしても、それだけの力はもうここには残ってないわ。時をさかのぼることは不自然なことよ。私が言えることではないけれど」
ミネルバが同意するように頷くのを見、シャロンは手のひらをジェイクの頬に当てる。そっと撫でると伸びかけたひげが当たり、それがなんだかとても愛おしくて、彼がここに生きてる証のように思えて、シャロンは微笑んだ。
「明後日、カロンの誕生祝いを無事終えることが出来たら――あなたの求婚を受け入れます」
シャロンの手に自分の手を重ねたジェイクは、低い声で一つ目の約束を了承した。
「わかった。何事もなく無事に過ごせれば問題ないんだからね」
ジェイクを殺そうとした男はもういない。ジェイクの花嫁になるはずだった女性に出会うこともなかった。それを理解していても、そうなるようジェイクが未来を変えたことが分かっても、シャロンの中の恐怖は楔のようにしっかり打ち込まれている。
でも本当に未来が変わっているなら、もう一度迎える明後日を最後にできるなら――。私は、彼と共に幸せを築いてもいいのだろうか……。
「シャロン、もう一つは?」
ジェイクの青い目がきらめき、手のひらに口づけられる。
シャロンは愛しさと苦しさで喉の奥に塊が詰まったようになりながらも、どうにかもう一つの願いを口にした。
「――ずっと、一緒にいて。絶対に私を置いて行かないって、約束して」
こらえていた涙が一筋こぼれおちる。
隠し続けていた本当の願いだった。絶対に叶わないと思っていた夢だった。
「私と結婚するなら、老衰以外で死ぬなんて許さない。私を置いていくなんて、勝手に死んじゃうなんて、絶対許さないんだから。私以外の女の子がジェイクの隣にいるのも嫌。あなたの手も唇も、私以外に触れないで! こんなわがままを嫌だと思うなら、どうかこのまま全部忘れて……」
ぽろぽろと涙が止まらなくなる。
一生に一度の願いを吐き出し、シャロンは両手で顔を覆った。
「もちろんだ」
ジェイクのかすれた声が聞こえ、ゆっくりと抱きしめられる。
「もちろんだ。約束する。こんな嬉しいわがままなら、いくらだって聞く」
髪を撫でられ、シャロンはたまらずしゃくりあげた。
「ねえシャロン、君もだよ? ぼくを置いて行かないでくれ。ぼくだって、君の隣に他の男がいるのは嫌だ。君のかわいい笑顔でさえ独り占めしたくて仕方がないんだ」
カロン姫にみんなが鼻の下を伸ばしてるのに腹が立って仕方がなかったと言われ、シャロンはクスクスと笑った。ぜったいそんなことないのに。
「うん。約束する」
ジェイクの腕の中でシャロンは頷いた。その背に手を回し、力いっぱい抱きしめる。
「愛してる、ジェイク」



