時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 ハッと息を飲んだジェイクにシャロンは微笑んだ。

「思い出したのか?」

 その答えは明らかな肯定だ。彼は本当に時越えの魔法を使ったのだ。

「――多分、あなたが思っているよりも、もっとたくさん、ね」

 そう、たくさん思い出した。バラバラになっていた本来消えているはずの記憶の破片が、彼の答えでキレイな形になる。

「でも先にあなたの話を聞かせて。何をしたの?」

 ジェイクの結婚式。山が火を噴いたあの日。
 シャロンは彼の命を救ったはずだ。なのになぜまた人生が繰り返されているの?

 そう静かに聞いたシャロンに、ジェイクは一瞬泣きそうな顔をしてあの日の話をした。すでにこと切れたシャロンを抱き、共に十年の時を駆けたと。

「十年!」

 呆然とした。同時に納得もした。どうりで記憶が二重になって混乱したはずだと。

「ミネルバ。どうしてそんな無茶をさせたの? 止めなかったの?」

 時間の設定も何もかもがめちゃくちゃだったのだろう。むしろ十年で済んだのは幸運だったと言える。

「止めましたよ。でも無茶をしたのはあなたも同じでしょう、シャロン」

 悲しそうなミネルバの表情に、ジェイクが驚いたような顔をしたのが目の端に入る。

「シャロンも?」
「……」

 沈黙を守るシャロンを無視し、ミネルバは「シャロンも時を駆けました」と言った。止めても無駄だと悟り、ミネルバの話が聞こえないようシャロンは耳をふさぐ。