時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 見た目はそっくりなのに、儚げで美しい王女。シャロンは一目見たときから彼女が大好きになった。姉だったことなんて覚えていなかったけど、そんなことは関係ない。ただ大好きだったのだ。カロンを覚えているかと聞くことは出来なくても、姉と呼べなくても、そばにいて笑わせたかった。

 いくつもの記憶が渦巻いて、整理するのに苦労する。きちんと整理したいのに、どうしてもジェイクの声が、姿が邪魔をする。あの口づけも、腕の中にいる安心感も何もかもが――

「ジェイクの、バカ……」

 立派になっていた。本当に素敵になっていた。
 カロンが目を離せなくなったのも不思議はない――なんて、他人事のように考えてしまうくらいに。カロンだった自分がどんな風にジェイクに甘えたかを思い出すと、恥ずかしさで叫びだしたい気持ちになる。

「あまり顔色がよくないようですね」

 いつの間にか側にいたイズィナ国の第三王子に声をかけられドキッとする。

「ロイ様……」

 護衛の一人であるジェイクは少し離れたところにいるのをちらりと確認し、シャロンはロイに一礼した。見目麗しい王子は、なぜか熱っぽい視線でシャロンを見てくるので戸惑う。他国の王子も同じような感じだったが、カロン姫の見合い相手と考えれば当然のことだろう。だがなぜか戸惑っているのは彼も同様らしく、しばらく見つめ合ったあとどちらからともなく苦笑した。

 すぐそばに誰もいないことを確認すると、ロイはさり気なくシャロンの耳元で
「私のほうが先にあなたと出会っていたら、何か変わっていたでしょうか」
 と、囁いた。

 シャロンは彼を見上げ、ゆっくりと首を傾げる。先に、と言うことは、彼はジェイクとシャロンのことを知っているのかもしれない。もしくは誰かと話している様子がすでに恋仲にでも見えていたのだろうか?

 だが彼の視線はシャロンを見ているはずなのに、何か違うことに戸惑っているようだ。その時また別の記憶の破片がカチリとハマるのを感じる。

「ロイ様に相応しいのはわたくしではありませんわ」

 ほぼ唇を動かさずに囁くと、彼は驚いたように一瞬目を見開き、切なげに微笑んで一礼すると去っていった。

 それを見送ると、やはり何か戸惑っているようなジェイクと目が合い、つい頬が熱くなる。それをごまかすように微笑んで見せると一瞬子どものような笑顔が返ってきて、シャロンの心臓はさらに騒がしくなった。