時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

「それで、次のデートはいつですか?」
「デ……、ちがうってば、もう。次のことなんて何も約束はしてないわ。どちらにしても、明日も明後日も――私には自由な時間なんてないもの」

 明日は昼食を兼ねた懇親会があり、明後日は親善試合もある。そして最終日はカロンの誕生祝と、抜けるわけにはいかない行事の目白押しだ。

 親善試合はセパーロという競技が行われる。各国の騎士などの有志者が参加する競技は、藤で編んだ軽いボールをけり上げたり手で打ったりして競うゲームだ。ネイディアで古くから親しまれている競技の一つで、娯楽としてもよく行われている。
 剣技ではないのは、今回形の上ではカロンが主催者だからだろう。最も活躍した優秀な選手に祝福を授けることになるため、また豪華に飾り立てられるはずだ。

 ジェイクはどちらの会場にもいることだろう。絶対に自分を見るはず。避けることなどできない。

「めちゃくちゃ着飾ったらバレないかしら」

 上目づかいでエルザを見ると、彼女は面白そうな顔をして「さあ?」とうそぶいた。

「さあって、ひどい。さっきは区別がつかないって言ってたのに」

 半泣きになっているカロンにクスクス笑いながら、エルザは「一般論ですよ」と笑った。

「レイクストン様が、姫様のお顔がすごく好みだったら、分からないじゃないですか?」
「それはないと思う……」

 もしそうなら、朝の時点でバレてるはずだ。

「もう、どうしてこんな」

 ちょっとしたいたずら心だった。王女ではない一人の女の子として、小さな冒険をしたかっただけだ。
 彼とはたった一日一緒にいただけ。それなのに何がこんなに特別なのだろう?
 強い男性(ひと)も、美しい男性も、優しい男性も、ましてやそのすべてを兼ね備えた男性も沢山いる。その誰かと身近な女官や侍女が恋に落ちるのは素直に応援できるのに、彼だけは他の人の所に行ってほしくないと思う。

 耳の奥で聞こえた――君はぼくのものだ――そんな傲慢なのに優しく甘い声。
 ただの幻聴なのに捕らわれてしまった。
 そばにいて、隣で笑い合いたい。それが当たり前だとなぜか思う。

「どうせ避けられるなら、バレる前に自分で打ち明けたほうがよさそう」

 王女だと距離を取られることと、軽蔑されることなら、せめて嫌われないほうがいい。

「でも姫さま。お姉さま方はみな、恋愛結婚ですよ?」
「聞いたことがあるわ。でもそれは、お父様たちが選んだ人の中から選ばれただけでしょう?」

 きっと姉たちは運がいいのだ。
 他国に嫁いだ姉王女でさえ、夫婦仲睦まじい。

「今回招かれた王子様たちは、カロン様の結婚相手の候補者ですよ」

 エルザの発言にカロンは目が丸くなる。まるで予想もしていなかった。

 ――結婚? 誰が?