「王子の協力で散策にかこつけて手分けして調べてみましたけど、時期も時期だからか、結界は強いですね」
国内外から人が王都に集まっているのだ。防犯のための警備も強化されているようだが、見えない壁も厚い。今は渡り鳥さえ入ってくることはできないだろう。それが彼女を守るためなら申し分ないはずだ。
「……あの子は、お前といても何も思い出さなかったのか」
「そうですね」
少しだけ不思議そうなミネルバにジェイクは苦笑を漏らす。
本当は少しだけ期待していた。自分を見て、名前を呼んで、この腕の中に飛び込んできてくれる彼女を夢見なかったと言ったら嘘になる。だが今日の調査で、事態は思ったよりも複雑かもしれないとジェイクは胸の奥が重くなった。
ミネルバの話によれば、この国の末の姫とされていた王女の名前はテオドラだった。四年前、シャロンと友人になった病弱な姫君だ。
シャロンとテオドラは瓜二つだった。そして二人は同時に、古代の魔女と面差しがそっくりだった。古代の魔女の名はブランシュ。別の名を白き魔女。
天からやってきた魔女の一人であった彼女は、魔女の多かったこの国で伴侶と共に暮らしていた。時の権力者が起こした戦に巻き込まれ最愛の夫を亡くした彼女は、後にラゴン領を救った白き魔女と同一人物であることをミネルバに確認済みだ。
「テオドラ姫は、そんなにシャロンと似てたのですか」
ミネルバの「手」が出してくれた茶を飲みながら聞くと、目の前に立体の映像が浮かんだ。それはシャロンと、シャロンを淑やかにしたような儚げな少女。髪の色はシャロンが子どもの時のような白金だが、二人並ぶとよく知らない人間なら区別がつかないのではと思うほど似ている。
「一緒に育っていたら、二人は姉妹というよりも双子のようだったでしょうね……」
テオドラはシャロンより一つ年上で、彼女の実の姉だった。シャロンは本当に王女だったのだ。だがテオドラとシャロンは幼少の頃、二人一緒に賊に攫われたのだという。
捜索は二ヶ月かかったそうだが、見つかったのはテオドラだけだった。傷つき衰弱した姫を見た近衛兵は、すでにシャロンの生存は絶望的だと判断した。それも無理はないだろう。犯人が途中で目を離したすきにいなくなったという幼い姫が、一人で生き延びられたとは考えられないからだ。
テオドラはその時のケガと衰弱が原因で健康を損ね、以来、王宮の奥でひっそりと育てられた。
一方シャロンは、森で一人彷徨っていたところをミネルバに助けられ、大切に育てられた。
「テオドラが見つかったという場所とは随分離れていたから、賊は転移を使えたのかもしれないな」
そこから偶然落ちたのか、姉が妹を助けようとしたのか。今となっては分からない。幼かったシャロンは何も覚えていなかったからだ。名前は辛うじて聞き取った音から「シャロン」と名付けられた。幼かった彼女は、きちんとカロンと発音できなかったのだろう。
国内外から人が王都に集まっているのだ。防犯のための警備も強化されているようだが、見えない壁も厚い。今は渡り鳥さえ入ってくることはできないだろう。それが彼女を守るためなら申し分ないはずだ。
「……あの子は、お前といても何も思い出さなかったのか」
「そうですね」
少しだけ不思議そうなミネルバにジェイクは苦笑を漏らす。
本当は少しだけ期待していた。自分を見て、名前を呼んで、この腕の中に飛び込んできてくれる彼女を夢見なかったと言ったら嘘になる。だが今日の調査で、事態は思ったよりも複雑かもしれないとジェイクは胸の奥が重くなった。
ミネルバの話によれば、この国の末の姫とされていた王女の名前はテオドラだった。四年前、シャロンと友人になった病弱な姫君だ。
シャロンとテオドラは瓜二つだった。そして二人は同時に、古代の魔女と面差しがそっくりだった。古代の魔女の名はブランシュ。別の名を白き魔女。
天からやってきた魔女の一人であった彼女は、魔女の多かったこの国で伴侶と共に暮らしていた。時の権力者が起こした戦に巻き込まれ最愛の夫を亡くした彼女は、後にラゴン領を救った白き魔女と同一人物であることをミネルバに確認済みだ。
「テオドラ姫は、そんなにシャロンと似てたのですか」
ミネルバの「手」が出してくれた茶を飲みながら聞くと、目の前に立体の映像が浮かんだ。それはシャロンと、シャロンを淑やかにしたような儚げな少女。髪の色はシャロンが子どもの時のような白金だが、二人並ぶとよく知らない人間なら区別がつかないのではと思うほど似ている。
「一緒に育っていたら、二人は姉妹というよりも双子のようだったでしょうね……」
テオドラはシャロンより一つ年上で、彼女の実の姉だった。シャロンは本当に王女だったのだ。だがテオドラとシャロンは幼少の頃、二人一緒に賊に攫われたのだという。
捜索は二ヶ月かかったそうだが、見つかったのはテオドラだけだった。傷つき衰弱した姫を見た近衛兵は、すでにシャロンの生存は絶望的だと判断した。それも無理はないだろう。犯人が途中で目を離したすきにいなくなったという幼い姫が、一人で生き延びられたとは考えられないからだ。
テオドラはその時のケガと衰弱が原因で健康を損ね、以来、王宮の奥でひっそりと育てられた。
一方シャロンは、森で一人彷徨っていたところをミネルバに助けられ、大切に育てられた。
「テオドラが見つかったという場所とは随分離れていたから、賊は転移を使えたのかもしれないな」
そこから偶然落ちたのか、姉が妹を助けようとしたのか。今となっては分からない。幼かったシャロンは何も覚えていなかったからだ。名前は辛うじて聞き取った音から「シャロン」と名付けられた。幼かった彼女は、きちんとカロンと発音できなかったのだろう。



