「それはライクストン様が、ご自分をよく分かってらっしゃらないからじゃないでしょうか? あなたを見て目を輝かせたり、頬を染めてた女の子を何人も見ましたよ?」
ベールをしている娘でさえ、その目の輝きに気付いたくらいだ。向けられた本人が気づかないなんて、ありえるのかしら?
「それはない。絶対に君の気のせいだ」
「まあ」
褒めているのに強情に否定され、カロンは首を傾げる。まるで怒っているような表情に戸惑った。ここは普通喜ぶところではないのだろうか?
「だいたい君はどうなんだよ」
「私が、何か?」
「ぼ、ぼくを見て、ときめいたりしてないだろう」
あらびっくり。
パチパチと瞬きしたカロンは、必死の思いで噴き出すのを我慢した。本気? そんな拗ねたような顔をするなんて。でも、ここで笑ってはきっと彼の矜持を傷つけてしまうだろう。
「そんなことはないですよ。ライクストン様は素敵ですもの。私だってドキドキします」
だから自信を持って。
そう思ってにっこり笑って答えると、ジェイクは大きく目を見開いたあと、片手で顔を覆って蹲ってしまった。
「やだ、大丈夫ですか?」
ギョッとして駆け寄ると、彼が呻くように「……死ぬ……」と言うのが聞こえ、更に驚く。何かの発作を起こしたのかもしれない!
「あの、お医者様を呼んできます。木陰まで動けますか?」
休むなら木陰のほうがいいと思ったが、カロン一人でこんな大きな人を運ぶのはとても無理だ。オロオロしていると、ジェイクに手首をギュッと握られた。
「医者はいらない。君が側にいてくれれば大丈夫だ」
「でも……」
カロンを見上げるジェイクの目は、何か深い色が浮かんでいる。それはどこか悲しそうにも見え、カロンは医者を呼ぶのをやめ、彼の言うとおり側に留まることにした。
――どうしてそんな目をするの?
手を握ったまま、でも視線はそらされているため、カロンはジェイクの頭を見下ろす。傷ついているような表情だと思った。自分はモテないと本気で言ってるようだし、もしかしたらひどい失恋を経験しているのだろうか。
「ライクソトン様は、昔、ひどいフラれ方でもしたんですか?」
あえて気楽な口調でカロンがそう言うと、ふっと笑った気配がしてジェイクが立ち上がる。
「遠慮なく聞くんだね」
「すみません」
「いいよ。うん、そうだね。そういうことなんだろうな……」
椅子に戻りながらつぶやくような言葉に、カロンの胸がキュッと痛む。
「その女性は見る目がなかったんですね」
ぷくっと頬を膨らませると、ジェイクは面白そうに肩を揺らした。
「そんなことはないさ」
「……ライクソトン様は、今もその方が好きなんですね?」
無意識にこぼれたカロンの言葉に、ジェイクが驚いたように一瞬目を見開く。それは言葉にするよりも明らかな肯定だった。
「ああ、好きだ」
感情のこもった彼の告白は、だがしかし、自分に向けられたものではない。
「彼女ほど美しいと思える女性には、今後も出会えないだろうから……。ぼくはどうしても諦めることが出来ないんだよ」
だったらその優しいまなざしは、その女性のために取っておくべきだわ……。
「いつかその女性にも通じるといいですね。幸せな方ですわ」
ジワリと湧き出た苦い感情を飲み下し、カロンはどこまでも優しく笑って見せる。なぜか急に泣きたくなったが、感情はすべて笑顔の下に綺麗に隠した。
ベールをしている娘でさえ、その目の輝きに気付いたくらいだ。向けられた本人が気づかないなんて、ありえるのかしら?
「それはない。絶対に君の気のせいだ」
「まあ」
褒めているのに強情に否定され、カロンは首を傾げる。まるで怒っているような表情に戸惑った。ここは普通喜ぶところではないのだろうか?
「だいたい君はどうなんだよ」
「私が、何か?」
「ぼ、ぼくを見て、ときめいたりしてないだろう」
あらびっくり。
パチパチと瞬きしたカロンは、必死の思いで噴き出すのを我慢した。本気? そんな拗ねたような顔をするなんて。でも、ここで笑ってはきっと彼の矜持を傷つけてしまうだろう。
「そんなことはないですよ。ライクストン様は素敵ですもの。私だってドキドキします」
だから自信を持って。
そう思ってにっこり笑って答えると、ジェイクは大きく目を見開いたあと、片手で顔を覆って蹲ってしまった。
「やだ、大丈夫ですか?」
ギョッとして駆け寄ると、彼が呻くように「……死ぬ……」と言うのが聞こえ、更に驚く。何かの発作を起こしたのかもしれない!
「あの、お医者様を呼んできます。木陰まで動けますか?」
休むなら木陰のほうがいいと思ったが、カロン一人でこんな大きな人を運ぶのはとても無理だ。オロオロしていると、ジェイクに手首をギュッと握られた。
「医者はいらない。君が側にいてくれれば大丈夫だ」
「でも……」
カロンを見上げるジェイクの目は、何か深い色が浮かんでいる。それはどこか悲しそうにも見え、カロンは医者を呼ぶのをやめ、彼の言うとおり側に留まることにした。
――どうしてそんな目をするの?
手を握ったまま、でも視線はそらされているため、カロンはジェイクの頭を見下ろす。傷ついているような表情だと思った。自分はモテないと本気で言ってるようだし、もしかしたらひどい失恋を経験しているのだろうか。
「ライクソトン様は、昔、ひどいフラれ方でもしたんですか?」
あえて気楽な口調でカロンがそう言うと、ふっと笑った気配がしてジェイクが立ち上がる。
「遠慮なく聞くんだね」
「すみません」
「いいよ。うん、そうだね。そういうことなんだろうな……」
椅子に戻りながらつぶやくような言葉に、カロンの胸がキュッと痛む。
「その女性は見る目がなかったんですね」
ぷくっと頬を膨らませると、ジェイクは面白そうに肩を揺らした。
「そんなことはないさ」
「……ライクソトン様は、今もその方が好きなんですね?」
無意識にこぼれたカロンの言葉に、ジェイクが驚いたように一瞬目を見開く。それは言葉にするよりも明らかな肯定だった。
「ああ、好きだ」
感情のこもった彼の告白は、だがしかし、自分に向けられたものではない。
「彼女ほど美しいと思える女性には、今後も出会えないだろうから……。ぼくはどうしても諦めることが出来ないんだよ」
だったらその優しいまなざしは、その女性のために取っておくべきだわ……。
「いつかその女性にも通じるといいですね。幸せな方ですわ」
ジワリと湧き出た苦い感情を飲み下し、カロンはどこまでも優しく笑って見せる。なぜか急に泣きたくなったが、感情はすべて笑顔の下に綺麗に隠した。



