「早く目が覚めてしまってね。せっかくだから日の出を見ようかと思ったんだ。君は? まだ起きるには早いだろう?」
――うん、大丈夫。王女だってバレてないわ。
「私も早く目が覚めてしまったんです」
そう言ってにっこり微笑み合うと、なぜか仲間になったような奇妙な感じがして、どちらからともなくクスクスと笑い合った。ジェイクの笑い声は耳に心地よく、それだけでなんだかウキウキしてくる。いたずらを企んでいるような、何か秘密を共有したような。そんな気持ちになったのが嬉しくて、ふとカロンは日の出を見たいと言ったジェイクを秘密の場所に連れて行きたくなった。
普段なら、男性と二人になるなんてとんでもないと叱られるところだ。だが今はここには二人だけ。カロンが魔法で呼べば衛兵は駆けつけてくるだろうが、今は王女ではなく普通の女の子だ。秘密の時間を邪魔されたくないと思った。
「騎士様、もしよければ向こうに行ってみませんか? 日の出を見るのにぴったりな、きれいな場所があるんです」
カロンはそう言うと、つい甥にしているよう自然にジェイクの手を引き、甥とは全然違うその手の大きさにしばし戸惑った。自分の無意識の行動に相手の反応が気になりチラリと彼を見ると、
「どこに連れて行ってくれるの?」
と楽しそうに目を輝かせているので、カロンはホッとしてそのまま歩き始める。
迷路になったような低木の間を抜けると、死角にトンネルのような隙間がある。そこを抜けると白い四阿にでた。
「ここです」
四阿は記憶を失くしたカロンが唯一きちんと覚えていた場所だ。
小さなころからせっせと手入れをした秘密の場所。そこで会う秘密の友達がいたように思うのだが、その姿はまったく覚えていない。会いに来てくれないということは、もしかしたら空想の友達だったのかもしれないと思い始めていた。
崖の上に立つ四阿からは、広い森が見下ろせる。森の向こうが随分明るくなってきているので、日の出はもうすぐだ。
「あの森の向こうから朝日が顔を出すんですよ」
心地のいい風が吹き、ジェイクの髪とシャツが揺れている。柔らかそうな髪だなと思った。
「綺麗だな。――どうしたの、何か気になる?」
景色に見とれていたジェイクがカロンの視線に気づき、首を傾げた。
「騎士様の御髪を編んでみたいなぁと考えてました」
クスクス笑いながら答えると、ジェイクは「ああ」といいながら自分の髪を少しつまんだ。
「……じゃあ、編んでくれるかい?」
遠慮がちにそういうジェイクに快諾し、カロンはポケットから櫛を取り出す。
森を見下ろす形で座るジェイクの後ろに回り丁寧に髪をくしけずると、思った通り柔らかくて、いくらでも触っていたいその感触にうっとりした。他愛もない会話をしながら髪を三つに分け、ゆっくり編んでいく。洗髪料の香りだろうか。少しだけ爽やかな香りがする。
「綺麗な髪ですね。羨ましいです」
「そう? 君のほうが綺麗だと思うけど」
あまり頭を動かさないよう気を付けているのか、目だけをカロンに向けて言うジェイクの声は不思議そうだ。
カロンの髪は金色で腰まで届く長さながら、よく手入れしてもらっている。でもカロンは彼のこの髪の色がとても好きだと思ったので、曖昧に笑って何も答えなかった。
「はい、できましたよ」
――うん、大丈夫。王女だってバレてないわ。
「私も早く目が覚めてしまったんです」
そう言ってにっこり微笑み合うと、なぜか仲間になったような奇妙な感じがして、どちらからともなくクスクスと笑い合った。ジェイクの笑い声は耳に心地よく、それだけでなんだかウキウキしてくる。いたずらを企んでいるような、何か秘密を共有したような。そんな気持ちになったのが嬉しくて、ふとカロンは日の出を見たいと言ったジェイクを秘密の場所に連れて行きたくなった。
普段なら、男性と二人になるなんてとんでもないと叱られるところだ。だが今はここには二人だけ。カロンが魔法で呼べば衛兵は駆けつけてくるだろうが、今は王女ではなく普通の女の子だ。秘密の時間を邪魔されたくないと思った。
「騎士様、もしよければ向こうに行ってみませんか? 日の出を見るのにぴったりな、きれいな場所があるんです」
カロンはそう言うと、つい甥にしているよう自然にジェイクの手を引き、甥とは全然違うその手の大きさにしばし戸惑った。自分の無意識の行動に相手の反応が気になりチラリと彼を見ると、
「どこに連れて行ってくれるの?」
と楽しそうに目を輝かせているので、カロンはホッとしてそのまま歩き始める。
迷路になったような低木の間を抜けると、死角にトンネルのような隙間がある。そこを抜けると白い四阿にでた。
「ここです」
四阿は記憶を失くしたカロンが唯一きちんと覚えていた場所だ。
小さなころからせっせと手入れをした秘密の場所。そこで会う秘密の友達がいたように思うのだが、その姿はまったく覚えていない。会いに来てくれないということは、もしかしたら空想の友達だったのかもしれないと思い始めていた。
崖の上に立つ四阿からは、広い森が見下ろせる。森の向こうが随分明るくなってきているので、日の出はもうすぐだ。
「あの森の向こうから朝日が顔を出すんですよ」
心地のいい風が吹き、ジェイクの髪とシャツが揺れている。柔らかそうな髪だなと思った。
「綺麗だな。――どうしたの、何か気になる?」
景色に見とれていたジェイクがカロンの視線に気づき、首を傾げた。
「騎士様の御髪を編んでみたいなぁと考えてました」
クスクス笑いながら答えると、ジェイクは「ああ」といいながら自分の髪を少しつまんだ。
「……じゃあ、編んでくれるかい?」
遠慮がちにそういうジェイクに快諾し、カロンはポケットから櫛を取り出す。
森を見下ろす形で座るジェイクの後ろに回り丁寧に髪をくしけずると、思った通り柔らかくて、いくらでも触っていたいその感触にうっとりした。他愛もない会話をしながら髪を三つに分け、ゆっくり編んでいく。洗髪料の香りだろうか。少しだけ爽やかな香りがする。
「綺麗な髪ですね。羨ましいです」
「そう? 君のほうが綺麗だと思うけど」
あまり頭を動かさないよう気を付けているのか、目だけをカロンに向けて言うジェイクの声は不思議そうだ。
カロンの髪は金色で腰まで届く長さながら、よく手入れしてもらっている。でもカロンは彼のこの髪の色がとても好きだと思ったので、曖昧に笑って何も答えなかった。
「はい、できましたよ」



