ると雪が降ってきていた。
はっはっと息を吐く音に振り向くと、いつのまにかデュランがそばに立っている。名前を呼ぶと大人しくそばに来てきちんとお座りをした。
「ん? 何かつけてるのか?」
デュランの首輪の、いつもはジェイクが手紙を付けているところに手紙が付いていた。シャロンからだと気づいたジェイクは、急いでそれを取り、明かりの下にかざした。急いで書いたらしいそれは、少し震えているように見える。
親愛なるジェイクへ
今日は呼んでくれてありがとう。
すばらしい結婚式でした。
お客様の相手をしているジェイクはとても大人に見えて素敵でしたね。
きっと、あなたが正騎士になるのもあっという間だと思います。
なのに私は何か粗相をして、あなたに不快な思いをさせてしまったのですね。
ごめんなさい。
今夜は雪が降りそうなので、私たちは出発を早めることにしました。
あなたの無事と健康を祈っています。
元気でね。
シャロンより
「なっ!」
心臓をわしづかみにされたようだった。
シャロンが行ってしまう!
「嘘だ」
彼女の出発は、ジェイクが旅立った後のはずだ。
急いで館に行こうとしたが、館に行ったら色々なことを忘れてしまうだろう。
今日告げたかったことも、したかったこともすべて。
シャロンは粗相なんてしていない。ただジェイクが手前勝手に嫉妬しただけだ。
だが今館に行っても、きっと愛してるとは伝えられない。昔の自分に戻ってしまい、彼女を家族のように友人のように思うだけだ。さっき彼女にしてしまった事さえ忘れてしまって謝ることもできない。
でもこのまま行かせてしまったら二度と会えないかもしれない。遠話石も受け取っていないのだ。これでは遠く離れた彼女の声も聞けない、どこにいるかもわからなくなる。
未来が変わっているなら、彼女が前の通りに移動するとは限らないのだ。事実、早く出発しようとしているように。
急いで謝罪の手紙を書こうと思ったが、そうしている間にも彼女は行ってしまうかもしれない。館は空を飛び、馬よりもはるかに早く移動するのだ。
「デュラン、紅蓮の館に行くぞ!」
このままお別れなんて嫌だ。行かないでくれ!
デュランと闇の中を走り、いつものように森に入る。だが森はジェイクを拒むように道を隠し、何度も転んで傷だらけになった。
まだ何も伝えてない! 何も約束をしていない!
頼むシャロン、行かないでくれ!
ごぉぉ……っと風が唸るような音が聞こえる。
上空を見上げると、紅蓮の館が飛び去るのが見えた。
遅かった――。
「ちがう。こんな未来のために戻ってきたわけじゃない」
君との未来を望んでいるんだ! 望みはそれだけなのに!
シャロン、シャロン、シャロン!
「戻ってきてくれ、シャロン! ミネルバ、聞こえてるんだろ! 行かないでくれ!」
頼む。こんなことは一度だって望んだことはないんだ……。望んで、いないんだ。
「行くなー!」
だが咆哮のような叫び声は、風の音にかき消されただけだった。
はっはっと息を吐く音に振り向くと、いつのまにかデュランがそばに立っている。名前を呼ぶと大人しくそばに来てきちんとお座りをした。
「ん? 何かつけてるのか?」
デュランの首輪の、いつもはジェイクが手紙を付けているところに手紙が付いていた。シャロンからだと気づいたジェイクは、急いでそれを取り、明かりの下にかざした。急いで書いたらしいそれは、少し震えているように見える。
親愛なるジェイクへ
今日は呼んでくれてありがとう。
すばらしい結婚式でした。
お客様の相手をしているジェイクはとても大人に見えて素敵でしたね。
きっと、あなたが正騎士になるのもあっという間だと思います。
なのに私は何か粗相をして、あなたに不快な思いをさせてしまったのですね。
ごめんなさい。
今夜は雪が降りそうなので、私たちは出発を早めることにしました。
あなたの無事と健康を祈っています。
元気でね。
シャロンより
「なっ!」
心臓をわしづかみにされたようだった。
シャロンが行ってしまう!
「嘘だ」
彼女の出発は、ジェイクが旅立った後のはずだ。
急いで館に行こうとしたが、館に行ったら色々なことを忘れてしまうだろう。
今日告げたかったことも、したかったこともすべて。
シャロンは粗相なんてしていない。ただジェイクが手前勝手に嫉妬しただけだ。
だが今館に行っても、きっと愛してるとは伝えられない。昔の自分に戻ってしまい、彼女を家族のように友人のように思うだけだ。さっき彼女にしてしまった事さえ忘れてしまって謝ることもできない。
でもこのまま行かせてしまったら二度と会えないかもしれない。遠話石も受け取っていないのだ。これでは遠く離れた彼女の声も聞けない、どこにいるかもわからなくなる。
未来が変わっているなら、彼女が前の通りに移動するとは限らないのだ。事実、早く出発しようとしているように。
急いで謝罪の手紙を書こうと思ったが、そうしている間にも彼女は行ってしまうかもしれない。館は空を飛び、馬よりもはるかに早く移動するのだ。
「デュラン、紅蓮の館に行くぞ!」
このままお別れなんて嫌だ。行かないでくれ!
デュランと闇の中を走り、いつものように森に入る。だが森はジェイクを拒むように道を隠し、何度も転んで傷だらけになった。
まだ何も伝えてない! 何も約束をしていない!
頼むシャロン、行かないでくれ!
ごぉぉ……っと風が唸るような音が聞こえる。
上空を見上げると、紅蓮の館が飛び去るのが見えた。
遅かった――。
「ちがう。こんな未来のために戻ってきたわけじゃない」
君との未来を望んでいるんだ! 望みはそれだけなのに!
シャロン、シャロン、シャロン!
「戻ってきてくれ、シャロン! ミネルバ、聞こえてるんだろ! 行かないでくれ!」
頼む。こんなことは一度だって望んだことはないんだ……。望んで、いないんだ。
「行くなー!」
だが咆哮のような叫び声は、風の音にかき消されただけだった。



