時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 春になれば、ジェイクは大領地で騎士見習いになり、しばらく過ごした後王都に行くことになっている。
 秋にジェイクは大領主のもとに姉の結婚許可証をもらいに行き、同時にその夫が領主の後継者となる承認証ももらってきたのだ。つまりジェイクは次期領主の地位を義兄に譲る形になる。ジェイクが領主になるために騎士になるのだと思っていたシャロンは驚いた。

 だから聞いてみたことがあるのだ。

「本当にお姉さんの旦那さんが後継者になるの? 本当はジェイクが後継者だったんでしょう?」

 と。だがジェイクはいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「それがぼくの望みだから。ぼくは騎士になるからね」

「ジェイクは、いい領主様になると思うわよ?」

 ミネルバの教育を受けているのだ。知識だけみても誰にも引けは取らないだろう。
 二人で競うように学んだ。ジェイクは乾いた大地が水を吸収するように知識をどん欲に吸収したし、彼の柔軟な発想をシャロンはこっそりと尊敬している。
 ただの騎士より……と言っては語弊はあるだろうが、彼は導く立場に向いているような気がするのだ。

「ぼくもそう思う」

 胸を張ってしたり顔のジェイクに、じゃあなぜ? と尋ねると、彼は思慮深い顔でシャロンをじっと見つめた。

「身軽に動ける立場でいたいんだよ」
「そうなの? でも、一介の騎士では戦争とかにも駆り出されちゃうでしょう?」
「だいじょうぶ」

 ジェイクは時々、ずっと年上みたいな顔をする。そんなとき、シャロンはどうにも落ち着かない気分になるのだ。シアの花嫁衣裳について聞いたときも「シャロンも着てみたい?」なんて言われ、なんだか困った。

「で、シャロンはどうするの?」
「どうするって?」
「そろそろ移動する時期だってミネルバが言ってたよ」

 何でもないふうに言われ、シャロンは少し泣きたいような変な気持ちになった。たしかにここには長くいた。三年半は、滞在期間としたら最長だ。

「うん。ミネルバは西に移動するって言ってる。王都と大領主様のお城の間くらいだね」