そう主張するジェイクに不思議な気はしたし、その時なぜかジェイクが初対面のはずの騎士の名前も言ってたような気がするが、助けたときに聞いたのかもしれない。
むろん男を死なせる気などなかったシャロンは、魔法でその騎士と馬をジェイクの住む城に運び、男の骨を接ぎ、怪我が原因の高熱を下げるための薬を処方した。その後馬の折れた足も接いだ。
はじめてシャロンが城に行ったことでまわりは大騒ぎだったようだが、ジェイクもシャロンもそれを気にする余裕などなかった。崖から落ちた彼をジェイクの見つけるのがあと半日も遅かったら、魔法の力があっても命の保証はできなかっただろう。
シャロンができることが終ると、あとの看病はジェイクの姉が引き継いだ。
ジェイクの五歳年上だというシアは、儚げな印象の綺麗な女性だが、意外なほどに芯が強く体力もあった。傷の消毒にもひるむことなく、自分よりもずっと小さなシャロンの言葉にも、まるで偉い人の言葉を聞くかのように真摯に耳を傾けてくれた。
意識のない大男の看病は、簡単なことではなかったのにだ。
そんな献身的に看病したシアに騎士が心を捧げるまで、時間はかからなかったのは当然と言えば当然の流れだったのだろう。
「目が覚めてシアを初めて目にしたとき、女神がいるのかと思ったよ。こんな美しい笑顔を見られたなら、天に召されるのも悪くないなと思ったくらいだ」
そう言って笑う騎士の名前はクロウ・ラス・カード。
岩のような体躯、思慮深い目の男は、たいへん教養ある人物だった。
王立騎士団に所属し、一時的に帰省が許された矢先の事故だったらしい。
身分はもとより、誰の目にもシアと相思相愛になった彼は、たしかにジェイクの言う通り、彼の姉にふさわしい男だった。
「ジェイクってば、占い師の力もあるみたいね」
ある日、往診の代わりに館の水晶でクロウに寄り添うシアを見て、シャロンはミネルバにそう言ったことがある。目の色さえ分からない男がどんな人物かもわからないのに、よくあんなことが言えたものだ。しかもそれが正解なのだから恐れ入る。
「あんな風に想い合える相手には、人はそうそうお目にかかれないのにね」
「シャロンは子どものくせに、言ってることが老けてますよ」
「ほっといて」
それでも、自分が治療したとはいえ驚異的な回復を見せた男と、大好きな友の姉の結婚だ。妙に感慨深いものがある。二人を引き合わせたのはジェイクなのに、なぜか自分も二人の恋の橋渡しをしたような気がするのだ。
「宴、楽しみだな……」
春を寿ぐ宴も、結婚式も初めての経験だ。結婚式は物語では知ってるが、粗相をしないか少し心配でもある。それに宴が終わってしまえば、ジェイクとはしばらくお別れだ。
「寂しいですか?」
「うん」
むろん男を死なせる気などなかったシャロンは、魔法でその騎士と馬をジェイクの住む城に運び、男の骨を接ぎ、怪我が原因の高熱を下げるための薬を処方した。その後馬の折れた足も接いだ。
はじめてシャロンが城に行ったことでまわりは大騒ぎだったようだが、ジェイクもシャロンもそれを気にする余裕などなかった。崖から落ちた彼をジェイクの見つけるのがあと半日も遅かったら、魔法の力があっても命の保証はできなかっただろう。
シャロンができることが終ると、あとの看病はジェイクの姉が引き継いだ。
ジェイクの五歳年上だというシアは、儚げな印象の綺麗な女性だが、意外なほどに芯が強く体力もあった。傷の消毒にもひるむことなく、自分よりもずっと小さなシャロンの言葉にも、まるで偉い人の言葉を聞くかのように真摯に耳を傾けてくれた。
意識のない大男の看病は、簡単なことではなかったのにだ。
そんな献身的に看病したシアに騎士が心を捧げるまで、時間はかからなかったのは当然と言えば当然の流れだったのだろう。
「目が覚めてシアを初めて目にしたとき、女神がいるのかと思ったよ。こんな美しい笑顔を見られたなら、天に召されるのも悪くないなと思ったくらいだ」
そう言って笑う騎士の名前はクロウ・ラス・カード。
岩のような体躯、思慮深い目の男は、たいへん教養ある人物だった。
王立騎士団に所属し、一時的に帰省が許された矢先の事故だったらしい。
身分はもとより、誰の目にもシアと相思相愛になった彼は、たしかにジェイクの言う通り、彼の姉にふさわしい男だった。
「ジェイクってば、占い師の力もあるみたいね」
ある日、往診の代わりに館の水晶でクロウに寄り添うシアを見て、シャロンはミネルバにそう言ったことがある。目の色さえ分からない男がどんな人物かもわからないのに、よくあんなことが言えたものだ。しかもそれが正解なのだから恐れ入る。
「あんな風に想い合える相手には、人はそうそうお目にかかれないのにね」
「シャロンは子どものくせに、言ってることが老けてますよ」
「ほっといて」
それでも、自分が治療したとはいえ驚異的な回復を見せた男と、大好きな友の姉の結婚だ。妙に感慨深いものがある。二人を引き合わせたのはジェイクなのに、なぜか自分も二人の恋の橋渡しをしたような気がするのだ。
「宴、楽しみだな……」
春を寿ぐ宴も、結婚式も初めての経験だ。結婚式は物語では知ってるが、粗相をしないか少し心配でもある。それに宴が終わってしまえば、ジェイクとはしばらくお別れだ。
「寂しいですか?」
「うん」



