シャロンは十四歳になった。
リュージュの森はほとんど故郷のような気持ちになっていた。ときどきほかの地方に行くこともあったが、長くても一月半くらいで戻ってきていたのだ。それはたぶん、ミネルバもこの土地が好きなのだろうとシャロンは考え、疑問に思っていなかった。だがそろそろ、次の場所へ行かなくてはいけない頃合いだった。
年が明ける日は、春を寿ぐ宴が領主の城で開かれるらしい。
その年、シャロンは初めてその宴に招待された。
「やっと十四歳だし、特別な日だからね」
この地方では十四歳は大人の入り口とされていて、大人しか参加できない夜の宴に参加できるようになるのだ。そこへシャロンも誘ってくれたのにはもう一つ理由があった。
今回の宴は同時に、ジェイクの姉シアの結婚式でもある。そしてシャロンは、彼女の結婚相手の命の恩人なのだ。
「シアの婚約者は、私がここに来る少し前に亡くなったのよね?」
以前シャロンはジェイクにそう尋ねたことがある。シアには幼いころから結婚相手が決まっていた。だが事故で亡くなったのだと。
「ああ。王が鹿狩りにやってきたときにね」
この小さな領地に王が来る機会はほぼないに等しい。そのめったにない機会に、その男はいいところを見せたかったのだろう。あわよくば、王の部下として召し抱えられることを夢見ていたのかもしれない。
「父は気が進まなそうにしていたんだけど、王が彼を気に入ってね。同行させたいって言ったんだ」
だが彼は何かに驚いて棹立ちになった馬から振り落とされた上、運悪くそのまま崖から落ちて絶命したらしい。ラゴンの狩場には美しい鹿が多く生息しているのだが崖が多く、事故も多い。狭い崖だと、枝葉に覆われて気付かないことさえある。大抵馬が避けてくれるのだが、気の毒なことだ。
このたびシアと結婚することになった男もこの崖から落ち、足を折り、肩に大けがを負った。だが偶然ジェイクとデュランが発見し、応急手当てを施した。
一匹でやってきたデュランの首輪の走り書きメモを見て、シャロンはその現場に駆け付けた。そこには倒れもがく馬と、ジェイクの何倍もありそうな大男が血まみれになっていたのだ。
「絶対に死なせないでくれ! 彼は素晴らしい騎士で、姉の夫にふさわしい男なんだ!」
リュージュの森はほとんど故郷のような気持ちになっていた。ときどきほかの地方に行くこともあったが、長くても一月半くらいで戻ってきていたのだ。それはたぶん、ミネルバもこの土地が好きなのだろうとシャロンは考え、疑問に思っていなかった。だがそろそろ、次の場所へ行かなくてはいけない頃合いだった。
年が明ける日は、春を寿ぐ宴が領主の城で開かれるらしい。
その年、シャロンは初めてその宴に招待された。
「やっと十四歳だし、特別な日だからね」
この地方では十四歳は大人の入り口とされていて、大人しか参加できない夜の宴に参加できるようになるのだ。そこへシャロンも誘ってくれたのにはもう一つ理由があった。
今回の宴は同時に、ジェイクの姉シアの結婚式でもある。そしてシャロンは、彼女の結婚相手の命の恩人なのだ。
「シアの婚約者は、私がここに来る少し前に亡くなったのよね?」
以前シャロンはジェイクにそう尋ねたことがある。シアには幼いころから結婚相手が決まっていた。だが事故で亡くなったのだと。
「ああ。王が鹿狩りにやってきたときにね」
この小さな領地に王が来る機会はほぼないに等しい。そのめったにない機会に、その男はいいところを見せたかったのだろう。あわよくば、王の部下として召し抱えられることを夢見ていたのかもしれない。
「父は気が進まなそうにしていたんだけど、王が彼を気に入ってね。同行させたいって言ったんだ」
だが彼は何かに驚いて棹立ちになった馬から振り落とされた上、運悪くそのまま崖から落ちて絶命したらしい。ラゴンの狩場には美しい鹿が多く生息しているのだが崖が多く、事故も多い。狭い崖だと、枝葉に覆われて気付かないことさえある。大抵馬が避けてくれるのだが、気の毒なことだ。
このたびシアと結婚することになった男もこの崖から落ち、足を折り、肩に大けがを負った。だが偶然ジェイクとデュランが発見し、応急手当てを施した。
一匹でやってきたデュランの首輪の走り書きメモを見て、シャロンはその現場に駆け付けた。そこには倒れもがく馬と、ジェイクの何倍もありそうな大男が血まみれになっていたのだ。
「絶対に死なせないでくれ! 彼は素晴らしい騎士で、姉の夫にふさわしい男なんだ!」



