その沈黙は、自分が拒絶されるまでの猶予期間のように感じられ、ジェイクは全身が冷たくなる。
「ねえシャロン。白き魔女の伝説を知ってるかい?」
からからに乾いた唇を湿らせ、どうにかそう言ったジェイクに、シャロンは微かに首を傾げた。
「あなたが私をそう呼んだこと以外で?」
「うん。この土地には、古くから白き魔女の伝説があるんだ」
「伝説?」
そう。それはこの地の人々が伝え続ける、忘れてはいけない物語。この領に住む者なら、誰もがその物語をそらんじることが出来た。
“それは遠い日の物語――。
かつて世界にはたくさんの魔女たちがいて、人々と仲良く暮らしていました。
魔女は魔法で空を飛んだり病気を治したりしてくれるので、人々は魔女たちを尊敬し大事に大事にしていたのです。
でもある時、世界は炎に包まれました。
強欲な権力者が現れ、魔女たちの力を自分の欲のために使おうとしたからです。
灰になった世界で、多くの魔女が消えました。あるものは永い眠りにつき、あるものは人に紛れ、あるものは遠くへ行ってしまったのです。
そんななか、心優しい人に守られ生き残った一人の魔女は、世界の惨状に胸を痛め、人が立ち直るためこっそり手伝いをしてくれました。
やがてこの地が落ち着きを取り戻すと、白き魔女と呼ばれたその魔女は天に帰ってしまいました。
人は魔法に手を出してはいけない。
魔女を利用してはいけない。
そう戒めて。”
荒野になり絶望の淵にいた人々に手を差し伸べた白き魔女は、天に帰ったのではなく最期はここで眠りについたとも言われている。魔女がいなくなったあと、住んでいた館は旅に出たそうだ。気まぐれに何年かおきに移動する館は、あちこちに残った英知のかけらを集め、同時に幸運を残していく――と。
「それがこの土地に残された白き魔女の伝説なんだ。魔女が住んでいた館は、紅蓮の館と呼ばれていたそうだよ」
年寄りの話によれば、前に館がここに来たのは百年以上も前。その時は館に誰も住んでいなかったらしい。ただ館は、賢者に知恵を与え去って行った。その賢者は当時の領主に知恵を与え、土地は作物が豊かに実るようになったという。
何度かの戦で支配者が変わったものの、この小さな領は基本的に平和であった。
そこに、久しぶりに館が白い魔女と共に帰ってきたのだ。
「君は気付いてなかったかもしれないけど、領内では恩人が帰ってきたって歓迎してたんだよ」
「ねえシャロン。白き魔女の伝説を知ってるかい?」
からからに乾いた唇を湿らせ、どうにかそう言ったジェイクに、シャロンは微かに首を傾げた。
「あなたが私をそう呼んだこと以外で?」
「うん。この土地には、古くから白き魔女の伝説があるんだ」
「伝説?」
そう。それはこの地の人々が伝え続ける、忘れてはいけない物語。この領に住む者なら、誰もがその物語をそらんじることが出来た。
“それは遠い日の物語――。
かつて世界にはたくさんの魔女たちがいて、人々と仲良く暮らしていました。
魔女は魔法で空を飛んだり病気を治したりしてくれるので、人々は魔女たちを尊敬し大事に大事にしていたのです。
でもある時、世界は炎に包まれました。
強欲な権力者が現れ、魔女たちの力を自分の欲のために使おうとしたからです。
灰になった世界で、多くの魔女が消えました。あるものは永い眠りにつき、あるものは人に紛れ、あるものは遠くへ行ってしまったのです。
そんななか、心優しい人に守られ生き残った一人の魔女は、世界の惨状に胸を痛め、人が立ち直るためこっそり手伝いをしてくれました。
やがてこの地が落ち着きを取り戻すと、白き魔女と呼ばれたその魔女は天に帰ってしまいました。
人は魔法に手を出してはいけない。
魔女を利用してはいけない。
そう戒めて。”
荒野になり絶望の淵にいた人々に手を差し伸べた白き魔女は、天に帰ったのではなく最期はここで眠りについたとも言われている。魔女がいなくなったあと、住んでいた館は旅に出たそうだ。気まぐれに何年かおきに移動する館は、あちこちに残った英知のかけらを集め、同時に幸運を残していく――と。
「それがこの土地に残された白き魔女の伝説なんだ。魔女が住んでいた館は、紅蓮の館と呼ばれていたそうだよ」
年寄りの話によれば、前に館がここに来たのは百年以上も前。その時は館に誰も住んでいなかったらしい。ただ館は、賢者に知恵を与え去って行った。その賢者は当時の領主に知恵を与え、土地は作物が豊かに実るようになったという。
何度かの戦で支配者が変わったものの、この小さな領は基本的に平和であった。
そこに、久しぶりに館が白い魔女と共に帰ってきたのだ。
「君は気付いてなかったかもしれないけど、領内では恩人が帰ってきたって歓迎してたんだよ」



