「ジェイク、ジェイク! テオドラに三人目の子が生まれたわ! 今度は待望の女の子よ!」
目をキラキラさせながらジェイクを出迎えたシャロンを抱き止め、ホッと息を吐く。
「興奮するのはわかるけど、君も身重だってわかってる?」
シャロンの大きなお腹を撫でると、返事をするようにジェイクの手を蹴るようにピクリとした感触が伝わる。
「あら、パパおかえりなさいって言ってるのね」
クスクス笑うシャロンは益々美しくなったと思い、ジェイクは目を細める。
そこにデュランが鼻を押し付け、自分も仲間に入れろと訴えてきた。
「デュランもおかえりなさい」
かがんでデュランの顔を両手で撫でまわすシャロンを見ながら、ジェイクは少し眉を下げた。
「やっぱりネイディアに行かないか?」
「またその話?」
「だって初めてのお産だし、向こうに行けば色々協力してもらえるだろう?」
もうすぐ訪れる出産予定日に向け、リュージュの森に留まるかネイディア王宮近くに行くかで揉めているのだ。
「ここだって、町の皆さんが手伝ってくれるって言ってくれてるのよ? シアも来てくれるし」
「私もいます」
ミネルバが水晶の中から呆れたように手を上げ、やれやれと首を振った。
たしかにミネルバがいれば大丈夫だろうけど。
五人も生んでいるシアが話し相手なら心強いかもしれないけれど。
でも……。
「パパは心配性ですねぇ」
クスクス笑うシャロンの呑気さに「でも」と、なお言募ろうとすると、彼女が、「あっ」と呟いて動きが止まった。
「シャロン?」
訝しげに問うジェイクに、シャロンはいたずらをした子どものような顔で上目遣いになった。
「あのね。……えーっと、今朝からもしかしたらと思ってたんだけどね?」
「うん?」
「陣痛、始まったかも?」
「はあああ?」
ケロッと通常運転の妻を思わず抱き上げ、ミネルバにどこに運べばいいかとオロオロしながら尋ねると、「まだ早い」と二人に呆れられた。
「いや、だって、え? だって予定より大分早いじゃないか」
早くても七日は後だって、ミネルバだって言っていたはずなのに。
「そうねえ。早くイトコに会いたくなったのかしらね? せっかちさんだわ」
「いや、せっかちとか、そういうことじゃなくて」
「まあ、まだ時間はあるし? 念の為、多めに食事を用意しておきましょう」
いや、それ大丈夫なのか?
「だから貴方も手伝ってね」
「……はい」
ゆっくりシャロンをおろし、彼女の指示に従うべくキッチンに入る。
ソワソワして二回も指を切ってしまったけど仕方ないはずだ!
翌日昼になり、紅蓮の館に新しい命が誕生した。それはジェイクに似た髪色と、シャロンによく似た面差しの女の子……。
疲れ切りながらも笑顔を向けてくれたシャロンに、何度も何度も感謝の言葉を繰り返し、その手から小さな命を受け取る。
なんとも小さくて柔らかくて、それでいて愛しくて仕方がないたしかな命に、心の奥から熱いものが湧き出してくる。
その思いにジェイクの目からぽろりと涙がこぼれた。
「ふふ。ジェイクを泣かせられる女の子が一人増えたわね」
「うん……。愛は、増えるんだな」
そしてそれは、なんと誇らしいことだろう。
「愛してるよ、シャロン。本当に君と出会えて、そして結婚できてよかった。本当に幸せだ」
「私も幸せだし、愛してるわ」
チュッと口づけを交わしてほほえみ合い、そして二人は最愛の娘の頬にも羽のような優しい口づけをした。
Fin
目をキラキラさせながらジェイクを出迎えたシャロンを抱き止め、ホッと息を吐く。
「興奮するのはわかるけど、君も身重だってわかってる?」
シャロンの大きなお腹を撫でると、返事をするようにジェイクの手を蹴るようにピクリとした感触が伝わる。
「あら、パパおかえりなさいって言ってるのね」
クスクス笑うシャロンは益々美しくなったと思い、ジェイクは目を細める。
そこにデュランが鼻を押し付け、自分も仲間に入れろと訴えてきた。
「デュランもおかえりなさい」
かがんでデュランの顔を両手で撫でまわすシャロンを見ながら、ジェイクは少し眉を下げた。
「やっぱりネイディアに行かないか?」
「またその話?」
「だって初めてのお産だし、向こうに行けば色々協力してもらえるだろう?」
もうすぐ訪れる出産予定日に向け、リュージュの森に留まるかネイディア王宮近くに行くかで揉めているのだ。
「ここだって、町の皆さんが手伝ってくれるって言ってくれてるのよ? シアも来てくれるし」
「私もいます」
ミネルバが水晶の中から呆れたように手を上げ、やれやれと首を振った。
たしかにミネルバがいれば大丈夫だろうけど。
五人も生んでいるシアが話し相手なら心強いかもしれないけれど。
でも……。
「パパは心配性ですねぇ」
クスクス笑うシャロンの呑気さに「でも」と、なお言募ろうとすると、彼女が、「あっ」と呟いて動きが止まった。
「シャロン?」
訝しげに問うジェイクに、シャロンはいたずらをした子どものような顔で上目遣いになった。
「あのね。……えーっと、今朝からもしかしたらと思ってたんだけどね?」
「うん?」
「陣痛、始まったかも?」
「はあああ?」
ケロッと通常運転の妻を思わず抱き上げ、ミネルバにどこに運べばいいかとオロオロしながら尋ねると、「まだ早い」と二人に呆れられた。
「いや、だって、え? だって予定より大分早いじゃないか」
早くても七日は後だって、ミネルバだって言っていたはずなのに。
「そうねえ。早くイトコに会いたくなったのかしらね? せっかちさんだわ」
「いや、せっかちとか、そういうことじゃなくて」
「まあ、まだ時間はあるし? 念の為、多めに食事を用意しておきましょう」
いや、それ大丈夫なのか?
「だから貴方も手伝ってね」
「……はい」
ゆっくりシャロンをおろし、彼女の指示に従うべくキッチンに入る。
ソワソワして二回も指を切ってしまったけど仕方ないはずだ!
翌日昼になり、紅蓮の館に新しい命が誕生した。それはジェイクに似た髪色と、シャロンによく似た面差しの女の子……。
疲れ切りながらも笑顔を向けてくれたシャロンに、何度も何度も感謝の言葉を繰り返し、その手から小さな命を受け取る。
なんとも小さくて柔らかくて、それでいて愛しくて仕方がないたしかな命に、心の奥から熱いものが湧き出してくる。
その思いにジェイクの目からぽろりと涙がこぼれた。
「ふふ。ジェイクを泣かせられる女の子が一人増えたわね」
「うん……。愛は、増えるんだな」
そしてそれは、なんと誇らしいことだろう。
「愛してるよ、シャロン。本当に君と出会えて、そして結婚できてよかった。本当に幸せだ」
「私も幸せだし、愛してるわ」
チュッと口づけを交わしてほほえみ合い、そして二人は最愛の娘の頬にも羽のような優しい口づけをした。
Fin



