時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 結婚後に色々な惑星を旅するために作られた、居住型宇宙船ミネルバ。
 なのに最初に訪れたこの星で宇宙嵐に遭い、大きな損傷を負った船は宇宙(そら)へと飛び立つことは叶わなくなった。ミネルバが最新型であったが故に、一番必要な核になるパーツがこの星では用意できないからだ。いつ止むか分からない嵐に輸送船もたどり着けず、こちらから他の星に行くこともできない。

 そして、愚かな時の権力者の手で様々な知識が失われた。

 かつて科学や超能力と呼ばれたものは時間を経て、すべて「魔法」と呼ばれるようになった。テオドラの前世ビアンカ(ブランシュ)は、稀代の超能力者であり科学者ジョージの妻であり、彼の右腕たる優秀な技術者でもあったのだ。

 魔王(兵器)など蘇らせない。あれは不要なものだ。
 だが間違った知識は幼い子供を、女性を傷つけた。命を奪った。
 魔王が女だと思われたのは、あの兵器の名前が女性の名だったからだろうか。

 とつとつと語られるロイの言葉を、ジェイクでさえ半分も理解できなかった。宇宙のことや、ここが惑星であることもミネルバから学んだが、空気のない世界に人が飛び出せるとはとても思えなかった。

 ジェイクが魔法だと思っていたもののほとんどは、かつて科学と呼ばれたものだ。
 不安定で危険もあるが、本当はうまく付き合えれば人々に恩恵をもたらすもの。かつて「誰もが使えた魔法」。それが科学。

 時をさかのぼれたのは、かつてタイムマシンを作ろうとして失敗したものだという。旅行のように過去に行くのではなくすべてが逆行する。年齢も記憶も含めて。
 覚えているのは管理頭脳であるミネルバの記憶媒体だけ。
 だから禁忌だった。意味がないものだから――。

 魔王が人ではないと言われた男たちは鼻で笑った。むしろ爆発のリアルな映像に目をぎらぎらと輝かせる。
 だがマトヴェイだけは目を開け、静かにロイの顔を見た。

「知ってるよ。だが私の声など、もはやこの者たちには届かない」

 そう言って薄く笑うと、いつのまにかシャロンがそばに来てジェイクの後ろに立っている。そして声に特別な音を混ぜると、マトヴェイ以外の男たちが突然意識を失った。

「さすがだね、いまどきこんな完璧な催眠波を使うなんて。お医者さんかな。君は誰だい? テオドラ姫に近い――」

 マトヴェイは目を細めてシャロンを見、一瞬目を見開いてからクツクツと笑い出した。