時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 当時捕らえられた拉致犯は、いずれ現れるという神の楽園を求めて遊牧する民の一部だった。その者たちはそれぞれ制裁を受けたが、捕らえられたものは誰一人、モニセアと関わっていることを口にはしなかった。

 だからこそ、早朝テオドラ(・・・・)が再び狙われていることをゼノンが上層部に訴えたとき、まじめな顔をして聞いてはくれたものの、内心一近衛兵がおかしなことを言い始めたと思われたことだろう。
 その時テオドラがシャロンを連れて国王の元に行き、彼女がカロンであると説明しようした。だがテオドラをカロンの名を口にするや否や、王妃はシャロンを抱きしめ、「カロン」とその名を呼んだのだ。

「やっと、名乗り出る気になったのね」

「気付いて、らしたのですか?」

「わからないわけがないでしょう。魔法の力で突然、テオドラがカロンと入れ替わったことだってわかっていました」

 王妃にはテオドラの操作は効いていなかった。
 昨日カロンが特別な声でテオドラを見せていたので、二人がそろう日が近いと思っていたのだと。だから後ろからジェイクはもとより、ロイが入ってきても驚かなかった。テオドラの相手はジェイクではなくロイなのだと認識していたと言われ、

「実は王妃は稀代の大いなる魔女なのでは?」

 と誰もが思ったが、彼女には魔力などないという。

 王妃が味方に付いたこと、シャロン達がミネルバの力をもとに可視化した情報を国王や正騎士に見せたことで話は早くなった。テオドラがブランシュの生まれ変わりであるとは告げなかったが、多分再来だとの確信を深めたのだろう。

 危険が気のせいで済めばいい。
 だが、もし実行に移そうとするなら容赦はしない、と。

 そして、シャロンが気付いた昔嗅いだ「独特の匂い」に気づいたことで、ひもづいて思い出された「声」。それからその男たちが身に着けているのがカロンとテオドラの髪だということをミネルバが高速で分析し、正体を暴き出した。

 髪には力が宿ると思われている。
 拉致犯たちは、攫ってきた幼いカロンたちの髪をことごとく抜いたのだ。母から贈られた髪飾りなど何年も付けられないほどに。

 自分が知らない幼かったシャロンの痛みや苦しみの一部に触れ、ジェイクは怒りで目の前が真っ赤になった。同時に、愛しい女性の髪を身に着けている男たちへの殺意を抱いたのは自分だけではなかっただろう。