時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 はじめて紅蓮の館を訪れて以来、ジェイクは三日と開けずにシャロンのもとに通った。
 それなりに仕事もあるし、最初は誰にも内緒で来ていたため一緒に過ごせる時間はごくわずかだったが、それでもシャロンと一緒にご飯を食べたり、菜園の手伝いをしたり、時には二人で変装をして一緒に出かけた。最初は森の外に待たせていたデュランも、シャロンが招いてくれたため一緒に館に行くようになった。


 隙間風も入らず、火を使わなくても夜でも明るい館。呼び出せば現れる本。
 室内にいても水を出せたり、食べ物を新鮮なまま保管が出来たりする。
 館に居ながらにして遠くを見ることが出来るし、話をすることもできた。

 だがそんな魔法の館に通っていることは、大人たちには早々にばれていた。十分に気を付けていたつもりだが、所詮は子どもの浅知恵といったところだったのだろう。領主である父に単刀直入に問いただされたとき、前世のジェイクは完全に血の気が引いていた。秘密を守れなかった自分は、もう二度と館に行くこともシャロンに会うこともできないと思ったのだ。
 だが元々、このラゴン領において“紅蓮の館”と“白き魔女”は特別な存在だった。


「ジェイク。お前が最近紅蓮の館に行っているという報告があった。そこには今、新しい白き魔女も住んでいるらしいと。相違ないか?」

 父からそう問われ、ジェイクは最初の時と同じように答えることにした。

「はい、その通りです」

 シャロンとの約束も大事だ。だが領内においての信頼も大事なのだ。今のは質問のようだが、否定やごまかしは全く許されなかった。

「そうか」

 大きく息をついた父は天を仰ぎ見た後、微かにジェイクに笑いかける。

「私はお前を誇りに思うよ。存分に学び、白き魔女には親切にするように。いいね」

「はい!」

 シャロンは気付いていないようだが、ジェイクが知る限り領内の人間は館の滞在も魔女の存在も歓迎していた。
 紅蓮の館と白い魔女はラゴン領の恩人だったのだ。

   ◆

 父に返事をしたその日のうちに、ジェイクは紅蓮の館に向かった。
 秘密を守れなかったことを謝罪するためだ。そのうえで、彼女たちの判断を仰ごうと思っていた。
 ジェイクは館もシャロンも大好きだったから、言い訳したり、無様に縋りつかないよう自分を戒めて、決死の思いでシャロンに会いに行ったのだ。

 だがジェイクが父とのことを話した後、シャロンは「そう……」と言ったきり、何かを考えこむような表情で黙り込んでしまった。