(俺)と「私」の諸事情



愛らしさがぽわぽわ...と漂ってきそうだ。

え、ここアニメの世界?異次元レベル超えてるて。

すっごぉ。こんな人いるんだぁ。

パフォーマンス全然ダメでも辛口コメントできないって、これ。

「白雪晴です。よろしくお願いします。」

完璧なビジュアルで言った白雪晴。
あれ、意外と落ち着いてる。
緊張とか大丈夫なのかな?

「…よろしく。君はなぜこのオーデションに受けた?」

セツヤさんも見惚れていたのか、慌てて毎回同じ質問をする。

「はい。アイドルは私にとって憧れであり、夢です。つらい時に何度も救ってもらった存在だからこそ、今度は私が誰かの力になりたいと思いました。この中で一番輝けるアイドルを目指したいです。」

はーい、一般回答きたー。
大体「夢と希望を〜」的なこと言っちゃうんだよね。

絶対こんなこと思ってないのに。
この子もそのパターンだと思う。

「ありがとう。では、曲を流します。」

セツヤさんがニコっと微笑む。
すると、Silent Voltageの冒頭が流れてきた。

これって、難易度高くない?

ステージ上の白雪晴は俯いてる。
さて...ダンスと歌はどうかな...?

白雪晴が顔を上げたとき。

え………?

瞬きをして見ると、瞳が空虚だった。

ごちゃごちゃ考えるのをやめたような、空っぽな瞳。

「ネオンが滲む midnight street
無言のままの heartbeat」

さっきの自己紹介の声とは違う、低くカッコいい声。

低音が出しづらいのか時々声が掠れてしまいそうだか、なぜかそれも様になっている。

「誰も知らないこの鼓動 暗闇の中で glow
触れそうで触れない distance」

ギャップだ。見た目には囚われるな、と打ち付けられる気がした。
この子はちゃんと理解してる。

ダンスパートが始まり、最初の一歩。
その瞬間、あたしは気づく。
――これは、違う。

動きに無駄がない。
力を入れているわけでもないのに、体の線が音楽とぴたりと重なる。
まるで曲が先にあるのではなく、彼女の動きに合わせて音が流れているようだ。