(俺)と「私」の諸事情



「Just city stars and satellite light」

Pre-Chorusに入った途端、ジェットコースターのように声がだんだんと上に登っている。

Aメロのバラードのような歌声ではなく、サビに向けて準備しているような強い声。
でもそれが彼女の魅力を最大限に見せている。

瞳から見える強い意志に、ぞわりと背筋が震えた。

でもそれが「私が一番」とこの場にいる人に打ち付けているようにも見える。

完全に、彼女はステージを支配する絶対的王者だった。

「It’s a rooftop rodeo Under skyscraper glow」

サビに入った。

歌詞をフレーズで打ち付けるような歌声。

一見シャウトかと思うけれど、しっかり歌を奏でている。

歌はもちろん、ダンスもすごい。

一瞬も隙を見せないし、サビに入って存分に発揮される彼女のダンススキル。

細かい音まですべて拾う複雑な振付。
その動きが次々と音にハマり、気持ちが良い。

右手が美しく滑らかに顔の前に動く。
会場の人たちが水谷蘭の圧倒的な顔面に注目中。

手を唇に持ってきたかと思うと、投げキッスをした。

…人間じゃ無いみたいだ。

スキルも人間超えだし。

実は高性能のアンドロイドだとか。

…ははっ。

この人、父親といつか並んじゃうかも。

心の中で乾いた笑いがした。