(俺)と「私」の諸事情



周りの空気が変わった。

っ、圧倒的なオーラ。

「私だけを見て」と言っているような瞳。

…うっわぁ。

完全に俺たち見てる人を水谷蘭の世界に入れさせてきてる。

ダンスが始まる。

最初は緩い感じだけど、プロの「緩い」だ。

余裕が溢れ出てる。

フッ、と唇の端を持ち上げたと思うと、

「Neon bleeding on a midnight sky」

震えるような歌声。でも、フレーズはしっかり聞こえる。まるで、歌詞の場所に連れ込まれてしまいそうな。

「Sirens singing down below」

少し強みが出された歌声。高い音程なのに、一切ブレない。

全てが完璧だ。

凄まじい計算と研究の末に作り上げられたであろうパフォーマンス。

だが、それを観客に悟られることなく、圧倒的な華やかさで隠す。
最初から完璧な、生まれながらの絶対王者。

そんな役を完璧に演じて、努力の痕跡など決して見せない。
結果が全ての芸能界において、真似するべきのアイドルだ。

そして何より、その容姿だよな。

パチン、と幼いような表情でウインクしたかと思うと、0.1秒後には目を細めて大人な表情したり。

華麗なターン、翻るジャケット。軽やかにこなす複雑ステップ。
絶対的な強者のオーラに、誰もが圧倒されていた。