(俺)と「私」の諸事情



「では、一次審査。スタートです。まず、一人目——水谷蘭。」

会場がうわあああ!と、ライブ級に盛り上がる。

…うわっ。いきなり初めからプロかよ。

社長、順番ミスってんじゃねーか。

「はい。」と、落ち着いた声で返事をした水谷蘭。

俺の横を通ったとき、

空気でわかった。

「余裕」が。

目も決して緊張を見せないし、なんなら緊張なんて無いのかもしれない。

「私が一番。こんなの余裕に決まってるじゃない。」と言っているみたいだった。

すげぇ自信の持ち方。

…水谷蘭は自分の表現の仕方を持ってるんだな。

みんな憧れの眼差しを向けている意味が分かったような。

気がしなくもなくもない。

「水谷蘭です。よろしくお願いします。」

上辺だけの笑顔を審査員に見せる。

「はい。では、なぜこのオーデションに応募したのですか?」

審査員の席にいるセツヤが質問をした。

「私は、アイドルに小さい頃からなりたかったからです。昔からアイドルは私の憧れであり、いつか私のことを見ている人が魅了させられるようになりたいからです。」