(俺)と「私」の諸事情



「最初、0.4秒速い。もう一回。」

…そんぐらいわかんないだろ。

でも父親が言っていることは実際合っている。

俺はアイドルなんて絶対嫌だけど。

そこから音楽を流しては止めて、と繰り返し。

4時間経った今、やっと1曲が終わった。

もう体はクタクタ。

早く寝たい。

疲れた...。

…そういえば今日暴力振るわれなかったな。

なんかいい事でもあったのだろうか。

ふと父親の方に目を向ける。

父親は——俺を睨んでいた。

鋭い瞳、冷たい心のこもってない眼差し。

…これ相当怒ってるわ。

目で人を殺せるって言うけど多分父親のことを言うんだろうな。

父親は俺が見ていることに気づいたのか近づいてくる。

寝っ転がっている俺を上から見下すように見た。

すると——父親はギラリ、と光った銀色のあるものをポケットから出して俺に向けた。