溺愛センパイと雨空の下で。

「よーっす!風羽お前これ食ってあげてくんね?」
「…は、はぁ?え、どういう状況?」


本当に走ってきてくれたのか髪が少し乱れてる橘先輩は、私を見ると目を丸くした。
久しぶりに呼ばれた『時雨ちゃん』という名前がやはりどこかむず痒い。

みんなは基本私のことを『時雨』だったり『守咲ちゃん』と呼ぶからあまりちゃん付けで呼ばれることには慣れていない。

久しぶりに見る先輩は3ヶ月前、クッキーを渡しに行ったあの日から何も変わっていなかった。1歩1歩近づいてくる先輩に、私の鼓動は1秒1秒早くなる。


「たっ、橘先輩っ、おひさし、ぶりです」
「…うん、久しぶり」
「あっ、あの、ハンバーガーお腹いっぱいで……た、食べてもらえますか…?」


久しぶりに会えた橘先輩との3ヶ月ぶりの会話がこんなにみっともないなんて想像もしてなかった。

少しずつ首の辺りから身体が熱を持っていく。

興奮するとしっぽを振る犬のように、人間は恥ずかしくなると顔を赤くする。
恥ずかしいことなんて私だけが知っていればいいのに、まるで恥ずかしく思っていることを橘先輩に主張するかのように赤くなる頬に橘先輩は優しく微笑む。