心臓はずっと落ち着かないままで、痛みとは別の意味で息苦しい。
「……。」
東はすぐには返事をしなかった。ただ、少しだけ視線を落として、私の足元を確認するみたいに見つめてから、ゆっくりと動いた。
え、なに……?
そう思った瞬間、東がふっとしゃがみこんだ。私のすぐ目の前で。そして、次の瞬間には、当たり前みたいな動きで、私の膝裏と背中に手を回してきて。
「へ?」
状況を理解するよりも先に、身体がふわっと浮いた。
「え、え?」
一瞬、何が起きたのか分からなくて、思考が止まる。
視界がぐらっと揺れて、気づいたときには私は東の腕の中にいた。いわゆる——お姫様抱っこ、ってやつ。
「ちょ、ちょっと…東!?」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。顔が一気に熱くなる。こんなの、漫画とかドラマの中だけの話だと思ってたのに。
「このまま保健室行くからじっとしてな」
東は特に慌てる様子もなく、いつもと変わらない落ち着いた声でそう言った。
「…っ、」
じっとしてな、って。そんな簡単に言わないでほしい。だって、無理に決まってる。この状況で、好きな人にこんなふうに抱えられて、平然としていられる人なんているの?少なくとも私は無理。



