「あのね、三木…」
一人で歩けないから、先生呼んできてくれる?
言おうとした、そのときだった。
「西宮!」
後ろ、体育館の入り口のほうから、はっきりと私の名前を呼ぶ声が響いた。聞き慣れた声に、思わず顔を上げる。
「…東?」
目を凝らすと、そこには息を切らしながらこちらに向かって走ってくる東の姿があった。どうしてここに、なんて考える間もなく、東はあっという間に私たちのところまで駆け寄ってくる。
「足痛めてんのに、無理して歩いたらダメだろ」
そう言って、少しだけ目を細める東の表情は、いつもよりもずっと優しくて、どこか心配そうで。
「え?」
なんで、東が知ってるの?私、誰にも言ってないのに。
「え、すぐり足痛めたの!?」
「そ、そう…さっきの試合でやっちゃって…でも、捻っただけだし大丈夫」
慌てて取り繕うように笑ってみせる。ふたりに心配をかけたくなくて、いつも通りを装って、私は一歩踏み出した。その瞬間、ズキッ、と鋭い痛みが足に走る。
「…っ、」
声を出さないように唇を噛みしめるけど、痛みは容赦なく広がっていく。
うぅ…さっき、大丈夫なんて言ったけど。本当は全然、大丈夫なんかじゃないよ~っ!



