青い青い空


 これは? 視線でそう尋ねてみれば、「よければ掛けてみてもらえませんか」と。返ってくるのはそれだけで。


「そうだな。できれば上向いて掛けて」

「え? う、うん」


 彼らの言う通り、まずは母の眠る海を見つめ、綺麗なコントラストの地平線と入道雲、そして眩しい太陽と青い()()()空に視線を移してから――……ゆっくりと眼鏡を掛ける。


「――――」


 急に色が付いた世界に、上手く言葉が出てこなかった。



「調整はまだ必要だと思いますが、一先ずは第一号として。それは僕たちからのプレゼントです」

「……どう、して……」

「言ったでしょう。伊代さんが苦手なものも知っているつもりですよって」



〝彼女は誰にも――家族にさえ、自分の病気のことを話していなかったそうだ〟

 私は誰にも――家族にさえ、自分の『目』のことは話していなかった。



「……宵くんも、知ってたの……?」

「言ったろ。十段階評価の一だって」



〝君のおかげで、青い空を初めて見たとね〟

 もう一度、青い空を見ることができるとは思わなかった。