青い青い空


『言ってなかったっけか。そのことについての処分は無しだ』


 勝手な行動であったことに間違いはない。だが勝負のこともあり、お咎めは無しになったそう。


 私のその無鉄砲な行動だけで、【青い青い空】の著者が一体誰なのか。上層部にも痛いほど伝わったのだという。

 終いには、『勝負を了承したのは皆様の方では? それで処分なんかしたら、立場上問題がありそうですけど?』なんて言いくるめて、上を完全に黙らせたらしい。


 怒らせたら怖いのはよく知っていたつもりだが、たとえそれが上の人間でも容赦ないとは。

 まさか、前以て勝負の内容を指定したのは、私の行動をそこまで読んでいたから……なんて、言いませんよね流石に。


『言うのが遅くなって悪い。俺ら……特に佐裕子は、その件で徹底的にやりあってたからさ』


 というのも、実はその賭け事をする前から、正社員への話は上がっていたそうだ。アルバイトでもキャリアアップの仕事を任せられたのは、所謂そういう経緯があったからだという。


『仕事内容は多少変わるけど、今と然程は変わらない。お前にとっても悪い話じゃないと思うよ』


 採用は年度明けから。できれば年末には返事が欲しいとのこと。

 確かに、安定した給金がもらえるわけだし、それこそキャリアアップによって給料アップも夢じゃない。いろんな保証や福利厚生だって付いてくるし、一からのスタートじゃない分安気だ。やりがいだって十分あるだろう。


 けれど、正社員になってしまえば副業――つまり掛け持ちはできなくなる。


『ま。焦らずしっかり考えろ。お前にとって一番いい答えを出してくれればそれでいいから』


 すぐに答えを出せなかったのは、大切なあの場所を、手放す勇気がなかったからだ。