青い青い空


 スウェットの上下に、濡れた短髪の黒髪。風呂上がりなのか、弟は息を弾ませながら私たちのことを見下ろしていた。

 明らかに苛立った様子に、何からどう話をすればいいか悩んでいた私の腕が、思い切り強く掴まれる。


「いっ。よ、宵くん?」

「帰んぞ」

「えっ、ちょ。まっ」


 けれどこちらの制止も虚しく、力任せに引っ張って連れて行こうとする。あまり騒ぎにはしたくないから、右京には申し訳ないが、ここでお暇させてもらった方がよさそうだ。


「す、すみません右京さん。また改めて謝罪に参ります」

「結構ですよ」

「け、けれど」

「ただ、言い忘れていたことがあって」


 そう言うと最後の一滴まで飲み干すようにカップを呷ると、彼は礼儀正しく両手を合わせた。


「そもそも本当に欠陥があったとして、本当に冷めた人間なら上司をけなしたところで怒ったりしませんし、電話の相手を思って悩んだりはしませんよ」

「え?」

「あとは、よく話し合われてください。お互い何を思っているのか、言葉にしないと伝わらないこともありますから」

「あっ。……ちょ、宵くん痛い。痛いってば」


 強引に引っ張られたせいで最後の方は上手く聞き取れなかったけれど。


(背中を押してもらった今、頑張らないでいつ頑張るの)


 彼にはまた、改めて御礼をさせてもらわなければ。