偽カノ始めたら、彼の本気が止まらない件

ギュッと繋がれた手は、力強くて温かい。

どこで誰が見てるかわからないから、これに慣れていかなきゃいけない。

二人きりの時は普通で……って条件を出したけれど、よく考えてみれば、家以外は誰かに見られているかもしれない状況だから、常に恋人ごっこをしていなければならないんじゃ……?

どうりで、この条件を出した時、あっさり了解したわけだ……。

自分で提示したくせに、なんか騙された気分。


「……桐谷君」

「違うでしょ、名前」


ああ、そうだ。

名前を呼ばなきゃいけないんだった。

私、今まで生きてきた中で、男の子を名前で呼んだ事なんかないんだけど。


「……悠斗……君」

「ああ、惜しい。何で、最後に君付けるかなー」


桐谷君が残念そうに言いながら笑った。