初夏。
窓を開け放った教室に、少し熱を含んだ風が流れ込み、文化祭の準備が本格的に始まったことを知らせていた。
放課後の教室は、いつもよりざわざわしている。
模造紙を広げる音、机を動かす音、どこか浮き足立った笑い声。
私はクラスの隅で、指示を書き写しながらぼんやりと考え事をしていた。
——月城くん。
あの日から、彼のことを考える時間が増えた。
あのバルコニー以来、彼と特別に話したわけじゃない。
それなのに、ふとした瞬間に視線が彼を探してしまう。
話しかけられた回数も、目が合った回数も、他の人と比べて多いわけじゃないのに。
廊下ですれ違うかもしれないと思うだけで、無意識に歩く速度が変わる。
——どうして、あんな言い方をしたんだろう。
——「懐かしい」って、何のことだろう。
考えても答えは出ないのに、気づけば、そんなことばかり考えている。
授業中、窓の外を見ているはずなのに、視界の端に彼の横顔が浮かぶ。
近くにいるときは、距離を測るみたいに落ち着かなくて、離れているときは、
なぜか少し物足りない。
自分でも、変だと思う。
すれ違う時に、つい目で追ってしまうのも。
彼が誰かと話しているのを見て、理由の分からないざわつきを覚えるのも。
これはきっと、まだ「好き」なんて言葉にするほどのものじゃない。
でも——知らないままでいたかったはずの人を、もっと知りたいと思っている。
それだけは、確かだった。
初夏の風が、また校舎を抜けていく。
その風の中に、彼の気配を探してしまう自分に気づいて、私はそっと胸の前で指を握りしめた。
名前を思い浮かべただけで、胸の奥がきゅっと縮む。
窓を開け放った教室に、少し熱を含んだ風が流れ込み、文化祭の準備が本格的に始まったことを知らせていた。
放課後の教室は、いつもよりざわざわしている。
模造紙を広げる音、机を動かす音、どこか浮き足立った笑い声。
私はクラスの隅で、指示を書き写しながらぼんやりと考え事をしていた。
——月城くん。
あの日から、彼のことを考える時間が増えた。
あのバルコニー以来、彼と特別に話したわけじゃない。
それなのに、ふとした瞬間に視線が彼を探してしまう。
話しかけられた回数も、目が合った回数も、他の人と比べて多いわけじゃないのに。
廊下ですれ違うかもしれないと思うだけで、無意識に歩く速度が変わる。
——どうして、あんな言い方をしたんだろう。
——「懐かしい」って、何のことだろう。
考えても答えは出ないのに、気づけば、そんなことばかり考えている。
授業中、窓の外を見ているはずなのに、視界の端に彼の横顔が浮かぶ。
近くにいるときは、距離を測るみたいに落ち着かなくて、離れているときは、
なぜか少し物足りない。
自分でも、変だと思う。
すれ違う時に、つい目で追ってしまうのも。
彼が誰かと話しているのを見て、理由の分からないざわつきを覚えるのも。
これはきっと、まだ「好き」なんて言葉にするほどのものじゃない。
でも——知らないままでいたかったはずの人を、もっと知りたいと思っている。
それだけは、確かだった。
初夏の風が、また校舎を抜けていく。
その風の中に、彼の気配を探してしまう自分に気づいて、私はそっと胸の前で指を握りしめた。
名前を思い浮かべただけで、胸の奥がきゅっと縮む。
