二学期の後半にもなると、僕たち高二生はいよいよ受験を意識し始める。時々リレーチームのメンバーとは、学校帰りに近くのショッピングモールに寄ったり、そこにあるファミレスでだべったりしていたが、もともとクラスが違うこともあって、段々とその回数も減り、十一月に入るとほとんど会わなくなった。LINEのグループだけはまだ生きていて、受験先の情報などは交換していた。この関係はずっと大事にしていきたい。僕と島江さん(人間と鳥両方の)にとっての恩人だし、高校生活の思い出を作ってくれた大切な仲間だ。
ある日の下校時間。
学校の昇降口で島江さんとばったり会った。
「お久しぶり、沢村君」
「ああ、久しぶり」
彼女ももちろんLINEグループに入っているが、めったに投稿はしないで既読専門だ。そりゃそうだ。このグループができた頃の記憶が無いのだから、会話の糸口がつかめないだろう。
夢の中で、(鳥の)島江さんから、『これからもニンゲンの島江凪とも仲良くしてやってクレ』と言われたが、僕は、彼女とどう接していいか、正直よくわからなかった。ほとんど僕のことを知らないし、僕も彼女の『素顔』を知らない。
「二年生、みんないよいよ受験勉強しなくっちゃ、ていう雰囲気になって来たね」
島江さんが話を振ってくれた。
「そうだな、体育祭も文化祭も終わっちゃったしね」
「体育祭、文化祭か……」
失言してしまった。彼女にはこの二つのイベントの記憶が無いのだ。
「あ、ごめん、余計なことを言ってしまった」
「ううん、いいの。フウカが色々話してくれたし……沢村君のことも」
「そうか……なら、よかった」
この街を流れる川の堤防に沿った遊歩道を歩く。
いつか、ここを二人で歩いたみたいに。
彼女の学生カバンには、僕が『餞別代りに』プレゼントした、シマエナガのケータイストラップが揺れている。
島江さんが不意に立ち止まった。
陽が傾き、茜色に染まりかけた空を眺めている。
「……沢村君、あのね……さっき君に会った時、理由はわからないけど、心が温かくなった」
そう言って彼女はしばらく黙って夕陽を見つめていたが、やがて僕の方に顔を向けた。
「コ……コウイチ君……今こうやって君を見ると、なぜか涙が出る……誰かが私にね、『バトンをちゃんと受け取って』って言ったような気がして」
そして、涙をぬぐい、彼女は歌を口ずさんだ。
それは、僕のたった一つのレパートリー……『飛べない鳥』。
ワンフレーズだけ歌い終わると、彼女は僕を振り返った。
「アリガトウ……いい言葉。ホントウニ」
「え?」
「え?」
僕も驚いたが、言葉を発した彼女自身も驚いている。
戸惑いながらも島江さんは言葉を続ける。
「飛べるようにしてくれてアリガトウな、コウイチ」
「え⁉」
「再開するカ?……ヤキソバとナポリのハーフハーフ・コッペパン争奪戦、ダッシュ&ピンポンヲ」
「えー!!!」
(了)

最後までおつきあいくださり、ありがとうございました!
∽∽∽ 登場人物(動物?) ∽∽∽
人間世界
島江 凪(ヒロイン・私文Aクラス)
沢村 光一(語り手・理系A)
〈リレーメンバー〉
タマミ(国文B リレーのリーダー役)
ヒロト(理系B 長身で頼れる男)
ヨウスケ(国文B ムードメーカー)
キヨミ(理系C リケジョ)
タク(国文C 寡黙なランナー)
フウカ(私文B 世話焼き)
コウイチの母
コウイチの父
(沢村家の商売はフラワーショップ)
凪の母
北海道の獣医さん
シマエナガの世界
パパ
ママ
シマ(長女)
ユキ(二女)
ナギ(三女・ヒロイン)
イブキ(長男)
ソラ(二男)
アオバ(三男)
リク(四男)
シズク(四女)
お手伝いのお姉さん
みんな、ご出演、感謝!



