島江凪は、二度恋をする。 ~飛べない鳥に、恋の歌~

コウイチの部屋から戻り(どうやって戻ったノカ、イマイチ覚えていナイ)、夕ごはんを食べて、お風呂に入った……なんだかコレ、小学生の日記みたいダナ。

お風呂から上がり、洗面所の鏡に、バスタオルでくるんだ自分の体を映ス。

島江 凪……さん。

可愛い子ダナ。


ちっちゃくて、色白で、黒い髪もツヤツヤできれいダ。
いったい、どんなキャラの子なんだろうカ?

クラスの子やフウカの、ウチへのリアクションから察するニ、おしとやかな子なのかも知れナイ。

みんな、こんなウチとでも仲良くしてくれているカラ、ホンモノの島江さん、愛されキャラだったのダロウ。
……会ってみたかったナ……それはムリか。


コウイチは、こういう子が好きなんだろうカ?

ウチのことよりも……。

いやバカ、なにを言ってるンダ⁉
もう、コウイチにはちゃんとアリガトウって言って、サヨナラしてきたではないカ。

今できることは、ウチなりに精一杯グルーミングして、フウカから教わった肌のお手入れをして、島江さんをもっともっと可愛くすることダケダ。


鏡の中の島江さん……ウチは、髪にドライヤーをかけて、ブラシを通してイル。


ウチのことを見つめている黒い瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれだした。

泣いてるのは、島江さん? それともウチ?

せっかくの可愛いお顔が、台無しダヨ。

もう、泣くのはおやめヨ、いや、やめヨウ。


髪もふんわり乾いたし。

トニカク、ウジウジ考えないで、もう寝ヨウ。


パジャマを着て、歯を磨いて、部屋に戻ル。


フトンに潜りコム。

暗クテ、暖かクテ、柔らかクテ、なんか『ふくろうハウス』の中にいるような気がシタ。

ウン。
ソコがウチのホントウの寝床ナノダ。


だんだん、ボンヤリしてくる。

ああ、ヤキソバとナポリのハーフ&ハーフ・コッペ
………もう一度、食べたかったナ。

コウイチと、一緒に。


ムニャムニャ……






目が覚めタ。

まわりを見渡すと――見渡すまでもなく、ウチの隣りにママがぴったりと寄り添ってくれていて――狭くて、暗くて、柔らかい場所。通称ふくろうハウス。ニンゲン、島江凪の部屋ではナイ。

コレが、ウチのゲンジツだ。


ニンゲンの世界は、夢の世界。

ソコで。

学校に行って、
学食でウドン食べて、
ピンポンやって、
カラオケで歌って(ウチは歌ってないケド)、
お花をもらって、
体育祭でリレーを走って、
綺麗な浴衣を着せてもらって花火を見て、
見舞いに行って、
……そして、チューをして。

ダレと?

そう。
コウイチという、ニンゲンの高校生の男の子。
ウチに、ありがとう、って言ってクレタ子。
また会おうって言ってクレタ子。

でも、もう、会えないんダ。

死ぬのは恐くナイ。
ダッテ、パパもママもずっと、こんな風にくっついていてくれルシ。
見つめてくれていルシ。
ウチの代わりに、兄弟姉妹が元気でいてくれのがナニよりもウレシイ。

……デモ、チョット、サミシイ。

背中の痛みがなくなっタ。というよりも、痛みがわからなくなッタ。


イヨイヨダネ。


涙で滲んだ通称ふくろうハウスの狭い部屋に。パパとママの顔に。
サヨナラ、と言って眼を閉じる。

キットもう、ニンゲンの島江凪に戻れナイ。戻ってもいけナイ。このまま夢も見ないで、眠るダケ。


“おーい、島江さーん ”


頭の中でコダマする、コウイチの声。

それが最後に聞けて、ヨカッタ。