……さっきは、かなり美形なんじゃないかって、一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、メロつきそうになった。
でも冷静に見れば、両耳にいくつもピアスが光ってるし、雰囲気も完全に危ない。こういうタイプとは、できれば今後一切関わりたくない人種だ。
ここで振り返ったら負けな気がして、私はそのまま距離を取ることにした。最後に、ぺこりと深く頭を下げる。今の私にできる、精一杯の謝罪。
それだけして、私は早々にその場を立ち去った。
この出会いが、これきりで終わると、そのときは本当にそう思っていた。仮にこの先また会うことがあるとしても、それはせいぜい、あの人の怪我が後から発覚したときくらいだろう、って。
恋とか、愛とか、そういう言葉にはキョーミがない。
ただ、なんとなく毎日を過ごして、放課後は大好きな友達と笑って、特別なことがなくても平和に暮らせるなら、それで十分だった。
誰かを振り回したり、逆に振り回されたり、気持ちを探り合ったりする駆け引きなんて、私には向いてない。
好き、とかは、口に出すのも、考えるのも、なんだかむず痒くて、恥ずかしくて、落ち着かない。
だから、あの木の下での出来事が、何かの始まりになるなんて、考えもしなかった。
この出会いをきっかけに――なんて、あり得るはずがなかったんだ。
少なくとも、そのときの私は、そう信じて疑っていなかった。



